中国株二季報2018年夏秋号から(その3)

前回前々回に続いて、残り全部を見ていきます。

香港の2000番台以降、上海、深圳のA株、B株、そして一部ADRも取り上げられています。

2202 万科企業 ― ROE 21.1、利回り 4.3%。前々回の記事で「不動産業界は対象外」と書きましたが、この企業だけは例外的に注目しています。その理由は、中小型住宅に注力しているということと、賃貸住宅にも参入しているということ。つまり、「どんどん建ててどんどん売る」といった一般的な不動産企業とは異なり、量の多い実需に応えた堅実な事業展開をしている点で長期投資の対象になりえると考えています。といっても、実はこの銘柄も10年ほど前に保有していたものを、その後売却しています。その後再参入を考えています。しかし、「実需の応えた堅実な事業展開」と書いたものの、その自分の判断に今一つ自信が持てていないため、決断しきれていません。

2318 中国平安保険 ― ROE 18.8、利回り 2.8%。香港上場の保険会社は何社かありますが、保有するならこの銘柄だと考えています。保険業界はバフェットも大好きですね。預かった保険金、「フロート」、つまり他人のお金を使って投資・運用を行うことができるためです。同社への投資を迷っている理由は、生命保険、損害保険がしょせんコモディティであるという点です。今のところは順調に増収増益を続けています。

3918 金界(Naga Corp) ― ROE 18.5、利回り 4.0%。このブログでも何度も取り上げている、カンボジアのカジノ企業です。昨年までは、巻末の「プラス153銘柄」というコーナーでこじんまりと取り上げられているにすぎませんでしたが、今年からはメインのコーナーで1ページ割いて紹介されています。2017年11月に「ナガ2」もオープンし、さらに2019年にはウラジオストックでのカジノ開業も予定されています。

600519 貴州マオタイ酒 ― 上海A株です。ROE 29.6、利回り 1.9%。以前の記事をご覧ください。他に代わるべきものがないという強固なブランド力を持っています。ただ、上海A株を扱っている証券会社は限られているうえ、円建てでの売買となるため、毎回為替手数料の負担がかかってきます。5年、10年持つつもりでないと買いづらいかもしれません。

3613 北京同仁堂国薬 ― ROE 19.7。これも以前取り上げた銘柄です(過去記事)。GEM市場からメイン市場へ移行し、コードも8136から3613に変更されています。

3799 達利食品 ― ROE 24.9。詳しくはまだ調べていませんが、菓子、飲料、菓子パンなどを扱っている企業のようです。ここ数年は順調に増収増益を続けています。

おまけ ― ずっこけていった銘柄たち

以上、現時点で注目したい銘柄を取り上げてみましたが、最後に、過去保有していた、あるいは、保有まではしていないが注目していたものの、その後業績が低迷していった銘柄について、その末路を確認したいと思います。

0178 Sasa International — 香港の化粧品小売りチェーンです。数年前までは、中国本土から香港へ買い物に来る観光客向けの売り上げで成長を続けていましたが、政府による香港渡航制限の影響を受けて業績が低迷していました。2017年9月中間決算では、不採算店舗の閉鎖、販管費圧縮により増収増益に転じています。しかし、香港の本土化が今後ますます進む中で、生き残りは厳しくなっていくのではないでしょうか。

0233 銘源医薬発展 — がん診断のための「腫瘍マーカー」を製造する企業です。以前保有していましたが、業績低迷で売却しました。その後、2014年本決算を発表できず2015年4月に売買停止となり、現在までその状況が続いています。

0460 四環医薬 ― この銘柄もブログで何度か取り上げています(過去記事)。先の0233やこの0460のような事例があるので、中国の医薬品業界への投資は二の足を踏んでしまいますね。業績だけ見ると非常に優良と思われる企業も多いのですが。

0699 神州租車 ― 中国最大のレンタカー会社です。数年前にIPOし、中国株関連のブログやメルマガ等でも注目銘柄として頻繁に取り上げられました。私も手を出すかどうか結構迷いましたが、結果として手は出しませんでした。その理由の一つが、世界的な同業であるHERTZの業績がぱっとしなかったからです。レンタカーって、参入障壁がそれほど高くない業種だと思いますし。0699も2016/12決算までは順調に増収増益を続けてきましたが、2017/12決算で大きくずっこけています。今後も大きな回復な期待薄と思います。

0769 中国稀土 ― レアアース製品のメーカです。中国株をやり始めたころに手を出し、その後業績が思ったように伸びないため売りました。中国が世界中のレアアース生産の大半をしめていることはよく知られており、その独占力の恩恵にあずかろうとしたわけです。しかし、そもそもの大きな勘違いが、同社はレアアースの生産ではなく、それを購入して二次製品を製造するメーカだという点です。原材料高騰を受けて、赤字が続いている状況です。(かといって、資源生産企業が必ずしも安定して儲かるわけではないですけど。)

0801 金衛医療 ― 「自己血液回収システム」を主力とした医療サービス・機器メーカです。これも手を出して、業績低迷で売り払いました。ここ数年赤字が続いているようです。

0829 神冠 ― ソーセージ用のコラーゲンケーシングの中国最大手です。故邱永漢さんがブログで推奨していた銘柄です。最大手ではあるものの、競争が激しい業界のようで、2014/12以降減益が続いており、このままいくと赤字転落もあるかもしれません。数年前に少しの間(1年くらい)保有しましたが、業績が伸びなかったので売りました。

1066 山東威高 ― このブログで以前取り上げていますので過去記事をご覧ください。2017/12決算は利益が大きく伸びていますが、これは「非」継続事業となった血液浄化製品事業によるものです。それを除くと成長が鈍っています。ROEも13.0にとどまっています。

こうやって、過去ずっこけてきた銘柄を振り返って、「決算上の数字では優良に見えるもの、今後ずっこけそうな銘柄」に対する嗅覚を養って行きたいと思っています。

そんな嗅覚が敏感になるにつれて、ますます中国株やその他新興国市場から、堅実な米国株へ、興味がシフトしていきそうです。