「逃げ出す」ために大切なこと

香港上場の銘柄を保有しているので、いまの香港の民主化を求める動きはどうしても気になります。

メディアで取り上げられるのは、過激なデモや警察の鎮圧の状況が主ですが、彼らも24時間デモをしているわけではなく、それぞれの「生活」があります。

移動中に見た記事なので、リンクは失念しました。WSJ日本版か日経(FT特約)の記事だったと思います。(今探しても見つかりません。忖度して消されたかな?)

デモに参加する大学生の子供を心配そうに見送る両親。デモを鎮圧する警察官を夫に持ち、自身や家族の個人情報をネットにさらされることをおそれる妻。

自らがその立場だとすると、本当にやりきれないと思います。

この香港の情勢がどう推移するか私には予測できません。

しかしどのみち、1997年の香港返還50年後、現在から28年後の2047年には一国二制度は終了し、香港は完全に中国の一部となってしまいます。

中国政府としては、あと28年待てばよいような気もしますが、香港の民主化の動きが本土に伝播することをおそれて、今の弾圧を続けているのでしょう。

自分が今の香港市民ならば、どうするでしょう?

私自身は、生まれ育った日本にそれほど愛着もありません。楽しく遊んで暮らすにはいい国だと思いますが。

もし、香港市民の自分が同じような愛国の程度ならば、自国の先行きよりも、自らや家族の先行きを優先して、国外への移住を考えるでしょう。

(香港人を含む)中国人は、そもそも国家を信用しておらず、血縁を一番大事にすると言います。

ならば、ほとんどの香港人にとって、「できれば家族と一緒に国外へ移住したい」というのが、本音なのではないでしょうか。

しかし、すぐにそれをしない理由は、いろいろあると思います。(実際に香港の人にインタビューしたわけではありません。すべて私の想像です。)

まだ28年も時間があるのだから、急ぐ必要はない、というのも大きな理由の一つでしょう。

そしてもう一つ。「逃げ出したいのは山々だが、どこへ逃げ出して、そこで何をして暮らしていけばよいのか」見通しがつかないことも大きな理由ではないでしょうか。

* * *

例を変えます。

ナチスによるユダヤ人迫害は広く知られていることです。

しかし、この迫害は一気に広がったわけではなく、ドイツやポーランドに住むユダヤ人には、迫害の兆候があってから強制収容などの本格的な迫害が始まるまでに、1年以上の時間があったそうです。

香港の50年の猶予に比べると相当短いですが、安全な国外(アメリカ等)への移住を決心しさえすれば、できないことではなかったかも知れません。

アインシュタイン、ドラッカー、ソロスなど、実際に国外移住を果たした有名人も多いです。

もし自分が当時のユダヤ人だったとして、逃げ出す決断をできたでしょうか。

もし決断できなかったとすれば、それは例えば十分な金銭がなかったという理由もあるでしょうし、先の香港の例と同じく「どこへ逃げて、そこで何をしたらいいのか分からなかった」という理由も多かったのではないでしょうか。

* * *

何が言いたかったかというと、現状から逃げ出す必要があるときに、その決断をするためには、逃げ出す行き先と、そこでどうやって暮らしていくのかという具体的なプランが重要だと言うことです。

そういうプランを十分描かずに亡命しているのが、今欧州に押し寄せているアフリカの人々だと思います。彼らは、そもそも自国で暮らし続けていれば命に関わるという時点まで追い込まれて、逃げ出しています。

しかし、去年までの香港人や、本格的な迫害が始まる前のユダヤ人たちは、そこそこ豊かで平和な生活を営んでいたと思われます。

そういう、「現状は心地よいが、確実に迫ってくる危機を認知している」状態で、逃げ出す決断をするためには、やはり「逃げ出す先の明確なプラン」が必要だと思うのです。

* * *

他人事ではないと思います。

硬直化した日本の大企業に勤めるサラリーマン。

よほど専門を極めた一部の人はのぞいて、自社の仕事を何でもこなせるように「ローテーション」という名の下で、「何でもできるけれど、何もできない」ジェネラリストに育て上げられた人々。

労働契約法第16条によって雇用を守られた、「給料高いだけで仕事できないおじさん」たち。

企業が安泰な間はよいですが、そういう硬直化した大企業でこの先5年健全な経営を続けられるところがどのくらいあるでしょうか?

退職金も、もらえるうちにもらっておかなければ、新聞で勤め先の経営破綻を知って、呆然とする日が突然来るかも知れません。

世界に誇る超高齢化社会を迎え、若い人も年老いた人も、ますます暮らしにくくなる日本。

若い人は、税や年金の負担が増えるばかりだし、日本の大企業に勤める限り、「使えないおじさん」たちの分まで安い給料で働かされます。しかも、市場で通用するスキルを身につけさせてももらえずに。

年老いた人も、若者に疎ましがられながら、年々細る年金に頼った貧しい生活を強いられ、まともな医療や介護も受けられなくなる。

早期退職できるだけの資産にはまだ届かないけれど、今の職場から逃げ出したいとき、どんな手段で労働収入を得ればよいでしょうか。

フリーランスで稼ぐためにプログラミングやデザインのスキルを身につけるでしょうか。

あるいは、FXで他人を出し抜いて安定した収入を得るための訓練を積むのでしょうか。

日本を飛び出すのなら、逃げ出す先はどこでしょう?

超お金持ちなら、カナダ、アメリカ、シンガポールなどの先進国でしょうか。

そこそこの小金持ちなら、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシアといった東南アジアの国でしょうか。フィリピンは在留邦人がよく殺人事件の被害に遭うらしいですが(しかも日本人の手によって)。

移住した国で何をして過ごすでしょうか。

食や気候は肌に合うでしょうか。

十分な医療や介護は受けられるでしょうか。

同居者がいるのなら、自分と国や地域の好みは合うでしょうか。

* * *

とりとめなく書きましたが、逃げ出したい「今いるところ」についてあれこれ思い悩むよりも、逃げ出す先でどう生活するかについて考えることに時間を使った方が、幸せに近づく速度が速くなるのだと思います。

夜風の気持ちいいベランダでハイボールを飲みながら。

投資と人生は自己責任で。

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