サラリーマンをしている間は、組織の中での固定化された人間関係や、他人によって決められた人間関係の中で生きていけば事足ります。
他人に嫌われたり疎まれたりしていても、与えられた職務を滞りなくこなしていれば、よほどのことがない限り、組織から排除されることはないでしょう。
しかし退職して、地域の活動や、趣味の活動で、いろいろな人と交わるようになると事情は変わってきます。相手にとって、あなたは「付き合うことを強制されているわけではない人」、「嫌ならば付き合わなければいい」人に過ぎないのです。
嫌われずにお付き合いしていただくためには、まず何より相手が嫌がることをしないことが大事ですが、それだけでは十分ではありません。
正直な話、お年寄りとはあまり話をしたくないと思って人は多いのではないでしょうか。仮に相手が親切で物腰が柔らかい人であっても。それはなぜかというと、話をしていても「面白くないから」だと思います。
かくいう私自身も、話し相手に喜んでもらえる「面白い話」をするのは苦手な方です。営業の人とかで初めて会ったお客さんと仕事とは直接関係ない雑談で楽しく場を盛り上げる人を見て、「自分にはあんな才能はないなぁ。たぶん一生無理なんだろうなぁ。」とあきらめていました。
しかし、先日ネットで見つけた本が、一筋の希望の光を与えてくれました。
なぜ、あなたの話はつまらないのか?(美濃部達宏、あさひ出版)
著者はテレビ業界の方のようです。
誰でも知っているような有名人の事例をあげて、「面白い話」、つまり他人に興味を持って聞いてもらえる話をどうやってロジカルに作り上げていくかが、わかりやすく書かれています。
面白い話をするのって、天賦の才だと思っていましたが、実はそうではなく、ロジックを正しく理解して、それに沿って話を組み立てれば、自分にもできるような気がしてきました。
2時間くらいで読んでしまえるちょうどよい分量です。
ざっくり流れをまとめてみます。
1.聞き手に「共感」してもらえるネタを選ぶ
人が話を聞いて面白いと思うためには、聞き手にその内容に「共感」してもらうことが必要です。
自分が経験したことがないような高級品や高額な食事やレジャーの話をされても、(人によっては「勉強になるな」と思ってくれるかもしれませんが、)興味を持ってもらえず、単なる自慢話ととられる可能性が高いですね。
共感してもらいやすいテーマとして、家族のこと、学校時代のこと、食・住に関すること、恋愛・仕事・お金に関することなどが挙げられています。
あるいは、自分自身に関する「情けない経験」や「コンプレックス」も、共感を持ってもらいやすいテーマだと書かれています。(確かに、面白い話の旨い人って、例外なく自虐ネタを披露する人ですよね。)
2.「フリ」と「オチ」で話の構成を作る。
面白い話には「オチ」がありますが、そのオチを最初からしゃべってしまっては面白くありません。
面白い話には十分な「フリ」があって、そのフリに対して意外な内容のオチがあってこそ、話が面白くなります。
この本で書かれているポイントは、まず初めに「オチ」を考えて、そのオチと「対照的な」フリを考えるということです。
具体的な例については、本書を読んでみてください。
3.その他様々なテクニックを使う
共感してもらえるネタで、フリオチに沿って話をするのが原則です。しかし、それ以外の様々なテクニックを使うことで、話をもっと面白くする例がいくつもあげられています。
いくつかをピックアップしてみます。
うまい毒舌を使う
毒舌は単なる悪口とは違います。
悪口は自分の感情を吐き出すものです。
一方「毒舌」とは、「他の人もきっとこう思っているだろうな」ということをうまく代弁してあげることです。
ただし、一番重要な点は、毒舌の対象となった本人に聞かれても、ちゃんと受け入れられる内容であることです。つまり、対象となった人への愛情を忘れてはいけないということ。
あるいは、名指しをせず間接的に言うのも手だと書かれています。
ひとり芝居
経験したエピソードを、経験した自分の視点でしゃべるだけではなく、その経験に登場する人物になり切ってセリフを言うと、話に臨場感が出てくるということです。
まとめ
今回ざっと一気に読みましたが、ここに書かれたことをできるだけ普段の生活でも意識してやってみたいと思います。
ただし、この本に書かれているのは、あくまで「口でしゃべる話」の場合です。しゃべりで話を伝えるときには、聞き手は話し手のペースに合わせるしかありません。
しかし、ブログや本といった文章で伝える場合には、読み手は面白くないところはさっさと飛ばすし、あるいは、書き手が意図したとおりの順序では読んでもらえないかもしれません。文章で伝える場合には、また違ったテクニックが必要なのだと思います。