「仮面」をかぶらない働き方、生き方。「ティール組織」と「アドラー心理学」

サラリーマンの辛さって、「仕事そのものが面白くない」という点もあると思いますが、それは自営業でもフリーランスでも同じことだと思います。

サラリーマンならではの辛さの本質は、職場にいる間は「仮面」をかぶらなくてはならない、という点にあると思います。

トップや上司が、眠くなるような経営方針をとうとうと語っていても、興味を持ったふりをして素直に聞く必要があります。

そのトップや上司にしたって、雇われの身であれば、自分の信念に基づいた方針というよりも、株主や取締役会に対して響きの良い、そして実態の伴わない空虚な方針をあげる例も多いでしょう。

平社員や中間管理職でも、本当は、毎月お給料さえもらえればいいと思っているのに、「全力を尽くして売上アップを達成します」とか、心にもない「前向きな発言」をしてしまいます。

本当は、定時でとっとと帰りたいのに付き合い残業をしたり、挙げ句の果てには、上司が休日出勤しているから自分もそうして一生懸命さをアピールしたり。

さらに、変に「投資の勉強」なんかをやって、「よい事業/企業」と「そうでない事業/企業」の見分けがつくようになったりなんかすると、事態はますます悪化します。

サラリーマン経営者とサラリーマン管理職が、苦し紛れに作り上げた「根性でコスト削減し価格競争に勝ち、売上も利益も同時にアップします!」みたいな事業戦略を見て 、「ああ、こんなことやったって、どうせ顧客も増えないし競合にも勝てないよなぁ」と思いつつも、文句も言わず従わなくてはなりません。

もしも、「こんな戦略で他社に勝てますか?当社のこういう強みを生かして、こういう風に戦うべきでは?」なんて意見をしてしまうと、だいたい干されてしまいますよね。

世の中には個人事業主やフリーランスの方、あるいは、若くして資産を築き自由な生活をしている人がいます。

しかし、そのほかの大多数の人は、組織に属して働いています。世の中の大抵の事業は大きな組織なしには成り立ちませんから。

では、その大多数の人は、リタイアするまで「仮面」をかぶり続けなくてはならないのでしょうか。 (そして、リタイアして仮面を脱いだ途端、暴走老人となって、世の中から疎まれるようになるのでしょうか。)

ティール組織

昨年2018年に発売されベストセラーになった「ティール組織」という本が、そういう疑問に一つの答えを出してくれます。

「ティール」というのは色の名前で、青緑に近いです(和訳本の表紙の色がそれだと思います)。ただ、この色自体にはあまり意味がありません。

人類が誕生してから現在に至るまで発生した様々なタイプの組織を色で区別しており、「ティール組織」に対して、我々の多くが働いている普通の会社を「オレンジ組織」と呼んでいます。

このオレンジ組織、つまりほとんどのサラリーマンが働いている組織の問題点は次の通りです。

  • 「目標」とその「達成度」によって人々を評価するため、人々は高い目標ではなく、無難に達成できそうな低い目標を設定しがちになります。(本書では「サンドバッキング」と呼んでいます。)
  • 経営者や上司は、部下や従業員を信頼して自由に行動させるよりも、統制を重視して「恐れ」によって彼らを支配しようとします。
  • そして、人々は高く評価されるために、上に書いたような「仮面」をかぶりはじめます。このことにより、人々は仮面の下に隠した自分の本当の力を出すことができなくなってしまいます。(上にあげた例だと、自分がよいと信じるアイデアを隠そうとしてしまいます。)

これに対して、ティール組織は以下の3つの特徴を備えています。

  • 自主経営 ― 組織のトップは存在するものの、それ以外の管理職は存在しません。組織の運営に関わる意思決定は、各々の従業員が自由に行います。「全会一致」で判断するのではなく、誰の意見でも原則的に受け入れられます。それに対して「自らの信念に反する」と覚悟を持てる場合にだけ、反対することが許されます。
  • 全体性 ― 「仮面」をつけた自分ではなく、自分のすべての面をさらけ出すことができます。それによって、自分のベストな力を引き出すことができます。
  • 組織の存在目的に意識を向ける ― 自主経営で各人が自由に意思決定を行うと、組織が回らなくなるのでは?という疑問が湧いてきます。しかし、メンバーが「組織の存在目的」を緩く共有しているので、その目的から外れた意思決定がなされることはなく、全体としてうまく回るのだそうです。

「そんなの理想論で、現実的には無理」とか、「せいぜい小さなベンチャーか、先進的なIT企業だけものの」と思われるかも知れません。

しかし、実際には、電力会社、自動車部品メーカー、食品会社といった「普通の業種」の営利企業で、このティール組織を実現している例があるのです。

よく知られている例では、アウトドア製品のパタゴニアが挙げられています。利益の追求よりも、自社製品のリサイクルなどを通じて環境負荷を減らすことに取り組んでいます。

アドラー心理学

ティール組織の考え方は、アドラー心理学とも共通点が多いようです。

他人と競争するのではなく、共同体の一員として、共同体にどう貢献するかを自分で考える。あくまで自分の信念にそって行動し、他人の評価は気にしない。など。

(アドラー心理学については、「嫌われる勇気」という本にわかりやすく解説されています。「心理学」というよりも、どちらかというと「哲学」に近いですね。)

よぼどの怠け者や反社会的な人でなく、普通に真摯に仕事に取り組むつもりのある人なら、こういう組織で働いてみたいと思いますよね。

でも、「自分の働いている組織をティール組織に変えていこう」と思っても、残念ながら無理なのだそうです。

なぜなら、それにはトップ経営者とオーナー(上場企業なら株主)がその気になって主体的に取り組むことが必須条件だから。

あなたが中間管理職だとして、「せめて自分の部署だけでも」と思って変革に取り組んでも「うまく言った事例はない」そうなのです。

これから若い世代によって生み出されてくる新しい組織には、こういったティール組織が多くなってくるかも知れません。

プラットフォームの経済学」という本では、従来型のオレンジ組織において、少数のトップ経営者が下す判断をHiPPO、”Highest-Paid-Person’s Opinion”(もっとも高い給料をもらっている人の意見)と呼び、こういう判断は、AI の下す判断に対して、すでに その精度で負けており、近いうちに取って代わられるだろうと主張しています。(ちなみに、英語で”Hippo”とは動物のカバのことです。)

しかし、ティール組織において、そこで働く一人一人が下す判断が、生命体のようにまさに「組織」されて自分たちの行方を決めていくやり方は、もしかしたらAIには代替できないかも知れません。なぜなら、働く人々自身が意思決定することが重要ですから。

最後に、投資家、株主として、こういうティール組織を応援していくやり方もあると思いました。

自らがそこで働くことができなくても、その組織の存在目的に共感することができれば、オーナーとしてそれを支えていくことができます。

当然、株主利益よりもその組織の目的を優先するのですが、結果としてそういう組織が世の中に受け入れられて、大きなリターンをもたらしてくれるかも知れません。

日経ビジネスの最新号でも、「働きがいのある会社」のランキングが発表されています。

空前の人手不足でもいい人材が集まる理由 ― 2019年版 「働きがいのある会社」ランキング

この中にも、投資家として応援したくなるティール組織があるかもしれませんね。

以上、あまり整理できていないまま、つらつらと書いてしまいました。

最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。

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