【読書メモ】ビッグミステイク ― レジェンド投資家の大失敗に学ぶ

最近、投資関係の本をあまり読んでいません。

まだまだ勉強すべきことは多いと思いますが、私の気持ち的に「だいたい全部分かったつもり」になっているせいか、新しい投資本を手にとっても「デジャブ」感を感じて、あまり食指が動きませんでした。

しかし、先日アマゾンのトップページに紹介されていた「ビッグミステイク」という本に思わず惹かれてしまいました。(アマゾンのリコメンド恐るべしです。)

ビッグミステイク レジェンド投資家の大失敗に学ぶ

グレアム、リバモア、バフェット、マンガー、ケインズといった有名どころに始まり、バンガードの創設者ジャック・ボーグルをはじめとしたファンドマネージャーなど、「成功した」15人の投資家が犯した「失敗」について書かれた本です。(何度も破産して、最終的に自殺したリバモアは「成功した」といっていいかどうか疑問ですが。)

内容も面白い上に読みやすく、3、4時間で一気に読んでしまいました。

藤野英人さんによる解説にも書かれているように、成功した投資家の失敗から教訓を学ぶといった生易しい本ではなく、誰にでも失敗は起こりうるということを学ぶための本です。

しかしあえて、長期投資での成功を目指す個人投資家として、私自分にとって教訓にできることをまとめてみました。

あくまで私個人で感じた教訓です。読む人によって受け取り方は違ってくると思います。

皆さんはどんな感想を持たれるでしょうか。Kindle版ならたったの1,782円で、世界の著名な投資家の失敗から教訓を得ることができるかもしれません。

  • 信用買い・ダメ・ゼッタイ
  • 得意なこと・企業分析に注力する
  • 自分の過ちを客観的に判断できるようにする

信用買い・ダメ・ゼッタイ

バリュー投資の権威でありバフェットの師であるグレアムと、そのバフェットのパートナーであるチャーリー・マンガーの失敗談からの教訓です。

グレアムというと固い投資を行うイメージがありましたが、1930年の株価暴落局面において「底」と判断して信用買いを行ったところ、そこからさらに株価が下落し、最終的には資産の70%を失う経験をしています。

マンガーの方は、失敗談ではないと思いますが、運営するファンドで73年と74年にそれぞれ30%台の下落を経験しています。

また、本書で取り上げられている例として、アマゾン、ネットフリックス、グーグルという「優良成長株」でも、その株価の上昇過程において株価が半減する局面が何度か発生しています。

私自身の経験として、2008年のリーマンショックにおいて、資産が約三分の一になったことがあります。

その時には信用買いしていませんでしたが、もし信用買いをしていればダメージは致命的だったはずです。(そして、今はもう「株式投資なんて、もうごめん」と思っているかもしれません。)

要は、いくら優良な銘柄であったり、あるいはインデックスファンドであっても、50%以上の下落局面は十分起こりうるということです。ですから、信用買いでレバレッジをかけることは、「ダメ・ゼッタイ」です。

得意なこと・企業分析に注力する

まず私自身の話から書きますが、投資先企業について決算書などの数字を見て定量的な評価をすることや、事業内容から永続性を評価することは、人並みにはできると自負しています。

一方で、世界の経済情勢や金利動向などから将来の株価や為替の動きを予想したり、あるいは、チャートからその後の価格の動きを予想したり、なんていうことは苦手ですし、おそらく生きているうちに得意になる可能性はほとんどないとあきらめています。

「ヘッジファンドの帝王」と呼ばれるマイケル・スタインハルトという人について、もともと得意な中小型株でファンドを成長させたものの、そこでいい気になって世界市場に打って出て、欧州債券で大損をしたという事例が挙げられています。要は、得意なことに注力すべきであって、理解できない分野に手を出すなということです。(バフェットも同じことを言っていますね。)

また、あのケインズも実は投資家としてけっこう活動していたようですが、当初はトップダウン・アプローチ、つまりマクロ分析から個々の銘柄選択を行って、大損しています。その後、企業分析をベースとしたボトムアップ・アプローチに切り替えて、成功しています。要は、マーケットを予想しようとしてもうまくいかない、ということです。

ちょっとこじつけっぽいかもしれませんが、私の場合には、得意な企業分析に注力して、苦手なテクニカル分析や相場予想は避けるべきという教訓と受け取りました。

自分の過ちを客観的に判断できるようにする

どんなに企業分析をしっかりやったつもりでも、失敗することはあります。

バフェットが失敗した例として、デクスター・シューズの例が挙げられています。企業分析の結果は申し分なかったものの、輸入靴の攻勢という予想外の事態により、大きな損失を出しています。

また、少数銘柄への集中投資で成功を収めているセコイア・ファンドでも、製薬会社バリアントの投資において不正会計の告発により株価を下げたところでナンピン買いに走り、最終的にファンド総額を約半分に落とす失敗を犯しています。

ここでの私なりの教訓は、ある銘柄を買うときに、その銘柄を買う理由、例えばどんな優位性を持ってるかなど、をちゃんと書き留めておき、そしてその理由(前提条件)が崩れた時には撤退するというルールを決めておくことです。

私自身の最近の例では、ネットワーク効果による優位性を持つと判断して買ったCHロビンソン(CHRW)について、アマゾンの類似サービスの参入によってその前提が崩れたという判断をして、CHRWを売っています。この判断が正解だったかどうかを知るには、もう少し時間が必要そうですけど。

著者について

巻末に、著者であるマイケル・バトニックさんの経歴が書かれています。

高校は優秀な成績で卒業したものの、何となく入った大学ではほとんど学校に通わず、結局退学させられてしまいます。

その後職探しをするものの、傷物の経歴のせいでなかなか職にありつけません。それでも、図書館に通い投資の勉強は続けます。そして、「本当にすごい偶然」によって今のポジションを得て、本書を著するまでに至っています。

どんな「すごい偶然」かは、ぜひ本書を読んでみてください。

さいごに

本書に書かれていることですが、我々サピエンスが誕生してから200万年もの時間が経過しているのに対して、株式という仕組みができて株式投資というものが生まれてからたったの200年程度しか経過していません。

7万年前に認知革命を経験して食物連鎖のトップに躍り出るまでの長い間、食物連鎖の「中間」に位置して肉食動物やその他の動物の脅威におびえる経験をしてきたサピエンスの本能(危ないことがあれば、とりあえず逃げる)が、投資を行う上での正しい判断(すぐに売るのではなく、ちゃんと理由を確認する)と合致しないのは当たり前です。

行動経済学から学ぶべきことは、まだまだ多そうです。

サピエンスの次に地球を制するホモ・デウスならば、本能に左右されず、適切な投資判断をできるようになるのかもしれませんけど。

投資と人生は自己責任で。

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