今朝(2月20日)の日経朝刊にフェラーリ(ティッカー:RACE)の新車発表の記事が出ていました。
ビジネスTODAY フェラーリ、変革に媚びず 新型車、日本で公開 株価別次元 競争超越 1台当たり利益1200万円
この記事では同社をトヨタ、VM、GMといった自動車会社と比較しています。しかし、マーケティング関係のビジネス書に書かれていることですが、同社の競争相手はこれらの自動車会社ではなく、宝石、宝飾品、高級ファッションなどのお金持ちが買いたがるものを売っている会社です。
つまり、フェラーリを買うお金持ちは「移動手段」としてそれを買っているのではなく、高価なものを持つ喜び、それを他人に見せびらかす喜びなどを、一般人には手が届かないような大金を払って買っているのです。
ポイントは、お金持ちにとってのこの「魅力」が今後10年、20年と続いていくものかどうかということです。
先ほどライバルは他の自動車会社ではないと書きましたが、といっても自動車は自動車です。EV化や自動運転化の大きな波の影響を受けることは必至でしょう。
特にEV化の点でいえば、上の記事にもあるテスラが大きなライバルになってくるでしょう。あるいは、デザインや性能の優れたEVをひっさげた「今はまだ存在しない」ライバルが現れる可能性もあるでしょう。
すでに今の時点で加速性能の面ではEVに軍配が上がるようです。ガソリンや軽油で動く自動車が「時代遅れの代物」になる日もあまり遠くないかもしれません。EVのインフラが整う必要がありますが、カーシェアリングや自動運転タクシーなどの領域から一気に広がってくる可能性があります。
周りに爆音を響かせるフェラーリよりも、静かな音で矢のような加速を見せるテスラの方に、人々は魅力を感じるようになるかもしれません。当然フェラーリもEVに進出するでしょうが、果たしてこれまでのような「強み」を維持することができるでしょうか。
* * *
それにしても1台あたり1,200万円の利益って、すごいですね。
2017/12決算は一部発表されていますが、BSとかCFが見つからないので、2016/12までの決算を見てみます。(時間がないのでYahoo Financeから3年分だけ拾っています。)
キャッシュフロー(in K EUR):
2016/12 2015/12 2014/12
営業CF 1,060,341 768,310 515,564
投資CF -338,007 -344,431 -350,646
財務CF -433,541 -381,590 -147,163
バランスシート(同):
2016/12 2015/12 2014/12
流動資産 1,990,795 2,194,148 3,442,184
総資産 4,060,378 4,209,873 5,616,373
流動負債 3,712,516 4,230,951 2,617,483
総負債 3,717,589 4,237,165 2,628,004
資本 342,789 -27,291 2,988,369
CFは健全ですね。流動負債が大きいのが気になりますね。
株価も見てみます。同社は2016/1にアメリカ市場に”RACE”というティッカーで上場しています。
上場以来、株価は約2.5倍にまで膨らんでいます。
実は上場のニュースを見た時にも、上に書いたようなこと(どうせこれからはEVの時代だからフェラーリの魅力もいつまでも続かないのでは?)を思って、見過ごしていました。
結果から言えば「2年で2.5倍」のチャンスを逃したわけです。でも、「相場を読む」1年、2年の「中期投資」ならともかく、「企業の将来価値を読む」長期投資として買うべきだったかどうかは疑問です。(負け惜しみ?)
同じような事情に置かれた企業として、オートバイメーカーのハーレーダビッドソン(HOG)があります。
オートバイにも電動化の流れが来ることは間違いないでしょう。ハーレーダビッドソン社自身も電動バイクのプロジェクトをすでに始めているようです。
でも、ハーレーの魅力って(乗ったことはないですが)あのドカドカと地面を揺らすようなエンジン音ですよね。電動化したハーレーにどれだけ魅力があるのか、「15.84」というPERが物語っているのかもしれません。
よかったら押してください。