新しい年が明けました。
日本でサラリーマンをやっていると、ほとんどの企業の年度の締めは3月末なので、「新しい年」といっても気分的な区切りくらいの意味しかないと思います。
しかし、投資、特に中国株、米国株投資をしていると、多くの企業の年度の区切りが12月末であることと、株売買の譲渡税の区切りにもあたることから、それなりに重要な区切りにあたりますよね。
さて、昨年の始めに一念発起して始めたこのブログですが、年の後半はだれてきて、ほとんど更新できませんでした。
正直なところ、銘柄のチェックは基本的に年1回の決算で十分と考えていますし、あとは大きく下げたときに買いを検討するために日々株価を確認するくらいしか、投資に関してあまりやることがないと思っています。
(なのに「趣味の投資」といえるのかよ!?というつっこみは許してくだい・・・。)
自分でやめると決めなければ、誰からもやめろと言われないのが個人ブログのいいところと開き直って、今後もぼちぼち更新していきたいと思います。
で、今年最初の記事ですが、書籍紹介から始めたいと思います。
「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい - 人生100年時代の個人M&A入門」(三戸政和)
ベストセラーなので読んだ方も多いと思いま すが、「お金の稼ぎ方」として自分にとっては新しいアイデアの一つだったので、紹介と感想を書いてみます。
お金の稼ぎ方の分類については、「金持ち父さん」シリーズで紹介された以下の4つの分類がわかりやすいと思います。
a) 雇われる(事業の主導権:他人、働く人:自分)
b) 自営業(事業の主導権:自分、働く人:自分)
c) 投資家(事業の主導権:他人、働く人:他人)
d) 事業家(事業の主導権:自分、働く人:他人)
サラリーマン投資家は、a)で稼いだお金で、c)をやっているわけです。
この中で、一番投資効率、つまり、投入した資源(金、時間、労力)に対する対価が大きいのは、d)の事業家だと言われています。長者番付を見ても、ほとんどが事業家であって、そもそもa)やb)の人はいないし、c)の投資家にはバフェットなどがいますが、少数派ですよね。
しかし、一般にd)をやるためには、親から事業を引き継ぐか、あるいは、自分でリスクをとって起業するしかない、というのが、私の今までの考え方でした。
親から引き継ぐ事業がある人は限られているので、ここではおいておきます。
起業が成功する確率は、1割にも満たないとも言われています。どの時点で「成功」とするかにもよりと思いますが。とにかく、サラリーマンをやめて起業に取り組むのは、たとえ定年まで働いて退職金を元手に始めるとしてもリスクが高すぎますよね。
で、先の本の話に戻りますが、本書のポイントは、
- 一からベンチャーを起こすのではなく、すでに安定して利益のでている中小企業を、個人で買える価格で買収して、事業家になりましょう。
ということです。
いま、中小企業のM&Aをすすめる理由
そして、今の日本の状況が、個人による中小企業M&Aをやるために絶好の機会だというのです。具体的には、以下の理由によります。
- 中小企業のオーナーが高齢化を迎えており後継者を探しているが、子供や他の親族も引き継いでくれず、従業員にも経営を任せられるような人材が少ないケースが多い。これから10年間で、このような中小企業の廃業ピークが到来する。(その数100万とも)
- 中小企業の経営は、仮に儲かっていたとしても、ビジネススクールで習ったり、あるいは大企業であれば当たり前にやっているような取り組み(顧客管理、業務ルールの整備、在庫管理・削減、IT化、その他諸々の効率化、人材育成など)をちゃんとできていないケースが多い。したがって、大企業で管理職をやっていたような人であれば、改善できる余地が大きい。
- 売買市場が整備されておらず、売買価格が当事者同士の「折り合い」だけで決まっ てしまうことが多い。つまり、サラリーマンでも手が出せる価格で買える可能性が高い。
- 買収に当たって借り入れをする場合でも、法改正により、経営者の個人保証が不要な融資の仕組みが整ってきた。(詳しくは本書を読んでみてください。)
中小企業M&Aを成功させるためには
また、このような中小企業M&Aを成功させるために以下のような提案もしています。
- 取っつきやすい飲食業は、競争も激しいので手を出さないこと。(この辺は、投資対象としても外食業を避けた方がよいというヒントにもなります。)
- できるだけ、これまでの自分の専門を生かせる業種を選ぶ。
- 中小企業M&Aを仲介するよき専門業者にアドバイスを仰ぎ、隠れたリスクについてしっかり調査する。(簿外債務、焦げ付いた売掛金、不正や係争、ステークホルダーとの関係、給料未払いなど)
- いきなり社長のポジションを引き継ぐのではなく、2、3年役員として経営に参画し、従業員や取引先の信用を得てから社長のポジションを引き継ぐ。
感想
本書の紹介はここまでです。
なんだか、自分にもできる気がしてきませんか?
サラリーマンのままで50歳半ばで役職を取り上げられて、あとは定年を迎えて、65歳くらいまで嘱託で、肩身の狭い思いで会社にしがみつくくらいなら、新たな新天地で「社長」と呼ばれて張り切ってみるのも悪いくない、と思われたでしょうか。
そう思われた方は、是非本書を読んでみてください。いろいろと具体的なお話がかかれています。
で、私も本書を読んで、「そういう生き方もあるな」と思い、この年末年始、ちょっと考えてみました。
結論から言うと、私はちょっと疑問を感じています。その理由ですが:
- (人付き合いの得手不得手にかかわらず)サラリーマン時代の最大のストレスって、「人間関係を選べないこと」、だった方が多いのではないでしょうか。中小企業の社長とて、いや、中小企業の社長だからこそ、従業員や取引先などの固定化された人間関係の中で生きていく必要があります。大企業で雇われている分には、(会社にもよるでしょうが)ごねれば何とか異動させてくれるようなケースもあるでしょうが、社長となれば逃げ場はありません。
- 本書に書かれた「中小企業がお買い得」な状況は、あくまで現在の日本に限られた話です。そもそもその日本の将来に希望が抱けない状況で、事業を保有する気になれるかどうかと言うことです。今から買収して、15年間経営するとして、2034年。そのころの日本に明るい未来はあるでしょうか。
- 海外で同じようなことをやれるかもしれません。しかし、(これは私の想像ですが)新興国ではそもそも安定して利益が上がっている中小企業が少ないかもしれません。また、欧米では日本と違ってMBAホルダー、つまり経営のプロがうようよいるので、日本でふつうにサラリーマンやっていた人には太刀打ちできないかもしれません。
ううん、紹介しておいて、疑問をあれこれ投げてしめるのもあまりよくないかもしれません。しかし、本書を読んでいろいろと思考実験でき、勉強にもなったのでご紹介しました。
こういう個人M&Aが今後のトレンドになる可能性は高そうです。。
まったく知らない、あるいは興味を持たないのと、知っていながら自ら判断してやらないのでは、「ふいにいい話が舞い込んできてまんまと騙される」なんてことになるかどうかという違いもあると思います。
今後もあまたの片隅において、気にかけていきたいと思います。