加齢と投資能力・老後も健全な投資判断をしていくためには

加齢とともに人間の知的能力が衰えることは疑いのないことです。

しかし、すべての種類の能力が一様に衰えるわけではありません。

心理学の用語に、「流動性知能(能力)」と「結晶性知能(能力)」という言葉があります。

レイモンド・キャッテル(Raymond Cattell)という心理学者が提唱した理論によるもので、ネットで意味を調べてみるとおおよそ以下のようなものであると書かれています。

流動性知能(Fluid intelligence)

  • 新しい場面や初めての経験に遭遇した場合に発揮される能力。
  • 「動作性」の知能。
  • 「生まれつき」の要素が強い。
  • 具体的には、推論力、思考力、暗記力、計算力、集中力など。
  • 加齢とともに急激に衰える。25歳頃にピークを迎え、65歳頃から急激に低下する。

結晶性知能(Crystallized intelligence)

  • 経験や専門的な知識を土台として発揮される能力。
  • 「言語性」の能力。
  • 学習や訓練によって身につく。
  • 具体的には、料理、習い事の能力(絵画、音楽など)、語学力など。
  • 加齢による低下が少ない。認知症になっても保たれる。

認知症になり、会った人の名前も覚えられない状態の老人が、昔習った習い事や料理はしっかりできる場合がよくあるそうですが、これは前者が流動性知能、後者が結晶性知能にあたるからだとのことです。

で、本題ですが、老後の資産運用を自分で行うとして、この投資活動に必要な能力は、流動性、結晶性のどちらに該当するのでしょうか。

一言に投資活動に必要な能力といってもいろいろとあるので、おそらく、それぞれ両者に該当するものに分けられるはずです。

また、投資といっても、相場を取りに行く、どちらかといえば「投機」に近いものもあれば、このブログで目指す「企業を部分的に所有する」スタンスの長期投資もあります。

ここでは、長期投資に必要と思われる能力について、私の考えで分類をしてみます。

投資にかかわる流動性知能(加齢とともに低下)

  • 成長している新しい業界や新興企業への投資の是非を判断する能力。(現在で例えれば、「仮想通貨」のような)新しい種類の投資対象への投資の是非を判断する能力。
  • 様々なニュースから、各銘柄の今後の業績への影響を推論する能力。

投資にかかわる結晶性知能(加齢してもあまり低下しない)

  • 企業の決算表から、(数字だけを見て)企業の健全性や成長性を読み取り、投資に値するかどうかを判断する能力。
  • (リーマンショックのような)相場の大崩れに際して、ぐっと我慢して銘柄を保有し続ける能力。ただし、そのような経験をすでに何度も積んでいる場合。

こんなところでしょうか。

ではどうすればよいのか?

上に書いた分類が正しいとして、老後の投資活動においてどうすべきかを考えてみます。

一番のポイントは、新しい投資対象を見つけることがだんだん難しくなってくるということだと思います。

一方で、すでによく知っている銘柄について、保有している、していないにかかわらず、決算表を見て保有すべきかどうかを判断することは、問題なくできるのではないかと考えています。

したがって、流動性知能が衰える60代半ばより前に、今後10年、20年と安定して利益を上げられそうな企業をできるだけたくさん選んでおき、それ以降は、それらの株価の動きと決算内容を見て、売り、買いの判断をするだけで済むようにしておくのが理想のような気がします。

もちろん、決算表を投資家の視点で読みこなす訓練を十分積んでおく必要がありますけど。

いよいよ保有すべき銘柄がなくなってくれば、その時にはETF投資に切り替えるなり、あるいは将来もし利率が十分上がっているようなことがあれば、債券を買ったりしてもよいのではないでしょうか。

間違っても、流行りの業界や新しい投資商品に手を出さないことです。そういうものを、どんなものかは知りつつも、「投資対象として無視」する訓練もしておきましょう。(新しいチャレンジは、投資以外の分野で!)

そして、もう一つ将来に備えてやっておきたいことがあります。

それは、今こうして書いているブログを継続することです。

加齢とともに「暗記力」も衰えますから、過去自分が調べたことや判断したことをクラウドに記録して、その力の衰えを補う必要があるでしょう。ブログに書けないようなことは、Evernote等も活用できるでしょう。

曲がりなりにもインターネットを通じて世の中に発信するわけですから、ちゃんと自分の考え方を整理する必要があり、それが精神的な刺激になると思います。

さらには、(そうなることが遠い将来であることを祈りますが)ブログを家族や知人に教えておけば、もし自分の判断能力が低下した時に、それを他人に察知してもらうことができるかもしれません。他人の言うことを自分が聞き入れるかどうかは別問題ですが・・・。

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