今日のお話は、私の失敗談です。「私のブラックスワン体験」とタイトルしておきます。
「ブラックスワン」というのは、ナシーム・ニコラス・タレブの有名な著書のタイトルです。(ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質)
オーストラリアかどこかで見つかった黒い白鳥のことですが、その意味は、「白い白鳥を何万羽、何十万羽と見つけたところで、それが黒い白鳥がいないことの証明にはならない」、「『白鳥はすべて白い』という命題は、たった一羽の黒い白鳥の発見で覆されてしまう」というような意味です。
この著書は主に金融について書かれたものですが、金融上の「ブラックスワン」の意味とは、「長い期間安定して価格が上がっているものでも、長い間上がり続けているという理由だけで、暴落しない保証にはならない」ということになります。
具体的な例は、例えば1987年のブラックマンデーとか、2008年のリーマンショック(サブプライムローンの暴落)などです。最近の例でいえばビットコインの価格がそれに当たるでしょうか(もっとも、ビットコインの場合にはそれがバブルであることが多くの人にとって明らかでしたけど)。
で、話を私自身の失敗談に戻します。
私は2004年に邱永漢さんの本「中国株の基礎知識」を読んで、中国株を買うことから投資生活を開始しました。この本を読んだことも、中国株式投資を始めたことも、それを含めて投資生活を始めたことも、すべて正解だったと考えています。
しかし投資を始めると経済ニュースにもいろいろ興味が湧くようになり、その中の一つとして、伊藤洋一さんのRound Up World Now!というポッドキャストを聞くようになりました。
その中で為替や金利の話題になったときに、伊藤さんがあのハスキーでダンディーなお声で「最近じゃ、賢い人は円を売ってドルを買って、毎日金利差をチャリンチャリンと懐に入れてますからねぇ」みたいなことをおっしゃっているのを耳にしたのです。(当時は米国の金利がまだ高かったころです。)
「えっ、そんな便利な仕組みがあるの!?」と思った私は、ネットでいろいろ検索した挙句、「FX」なるものがあることを初めて知りました。
今でこそかなりポピュラーになったFXでしたが、その当時はまだあまり知られていませんでした。
しかし、その仕組みを知った私はすぐに某海外のFX業者の口座を開設します。(当時はまだ日本人に開放されていました。今は日本の税当局の指導で日本人には口座を作らせないようですが。)
最初は、10万円、20万円くらいの保証金でちまちまポジションを取りますが、毎晩0時に数十円の「スワップ」が入金されるのを見ると、「もっとポジションを大きくすれば、何もせず毎日こうやってお金を増やせるのか?」と欲に目がくらんでしまいました。
また、最初はポピュラーなUSD/JPYから始めたのですが、もっとスワップの大きなGBP/CHF(イギリスポンド/スイスフラン)などのポジションも増やしていきます。
そして最終的には、80万円程度の保証金で約10倍のレバレッジをかけて、800万円ほどのポジションをとるようになりました。当時の記録がExcelに残っているのですが、毎晩0時に得られるスワップが2,000円強にまで膨れ上がりました。
「もっとポジションを大きくして、毎日2万円くらいスワップで収入が得られるようになれば、働かずに暮らしていけるのではないか?」と思うようになりました。
しかし、そんな私のFX投資(?)の記録は、2005/12/31の大晦日で止まっています。
この晩は、近所のシネコンに映画を見に行っていました。何の映画かは覚えていませんが、3時間ほどして家に帰り、パソコンで私の「打ち出の小槌」を見てみると、あったはずのポジションがきれいに消えてなくなっているのです。
「あれ?パソコンをつけっぱなしにしていたから、アプリが落ちたのかな?」と思い、パソコンを再起動してアプリを再立ち上げしてみますが、あったはずのポジションは消えたままです。嫌な予感を心の中で抑えつつ売買履歴を見てみると、「GBP/CHF 2.25、USD/JPY 114.75」でそれぞれ保証金不足によるストップがかかって強制売りをされていました。どうも、年末の商いが薄いところで、「ロスカット狩り(?)」(他人にロスカットさせるために価格を一気に下げること)にやられてしまったようです。
チャートを見ると、きれいに「ヒゲ」が出ていました。(つまり、価格はすぐに元に戻った。)
たった3時間ほど目を離したすきに、80万円もの大金を一気に失ってしまったのです。それも、「一攫千金」を狙って失敗したのではなく、日々2,000円ほどの小遣い銭欲しさにやったことの代償としてです。
この経験から、レバレッジをかけることのリスクが嫌というほど身に染みたのでした。
と同時に、レバレッジさえとらなければ、つまり現物買いさえしていれば、一時的な価格変動によって損を被ることなどないことも思い知ったのです。
これが、その2年後に訪れるリーマンショックによる株価暴落時に生きてきました。
2008年10月頃当時、自分のほとんどの資産を中国株式の形で持っていましたが、2007年11月の「直通車バブル」の最高値の時には、生まれてこの方持ったこともない金額にまで資産が増えました。
しかし、リーマンショックによる暴落で、実に約1/3にまで資産が目減りしました。それでも、動揺して底値で売り払うこともなく、その後の回復を何年もじっくり待つことができたのです。
予告: コカ・コーラ(KO)の2017/12決算まとめをやります。(でも、これから飲みに行くので、明日になるかもしれません・・・。)
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