昔の自分に何を教えてやりたいか?

他人や組織に縛られず自由に生きたい。

多くの人が望むことでしょう。もちろん、私自身もそうです。

しかし実際には、私は50代半ばにして、いまだサラリーマンとして働いています。

2004年、いまから16年前に株式投資を始めたおかげで、定年前に退職しても金銭的に何とかやっていけそうな目途が立ってきました。しかし、まだゴールではなく、もう少し我慢が必要です。もはや「早期」退職とは言えない年齢になりそうです。

もっと早く株式投資を始めていれば

という後悔の念が沸き起こってきます。

しかし、もしさらに5年前の1999年頃に投資を始めていれば、2000年のITバブルとその崩壊で痛い目にあって、「もう株式投資なんて絶対にやらない!」となって、退場していた可能性も高いでしょう。

ネットで株式を買えるようになったのは、1998年5月の松井証券のサービス開始からのようです。

それまでは、平日の昼間に証券会社に電話して売買するしかなかったわけですし、その頃は携帯電話も持っていませんでしたから、今のようにいつでも自由に株式投資をすることもできなかったでしょう。

今でこそ、年に数回しか取引しない投資スタイルに落ち着きましたが、投資し始めの頃は、日々の値動きに右往左往して頻繁に取引していましたから、もしネット証券がなければ、職場からこそこそ隠れて取引をして、周囲から「あいつは株にくるっている」なんて噂をたてられたかもしれません。

「もっと早く株式投資をはじめようにも、世の中の仕組みがまだ整っていなかったのだから仕方がないじゃないか」という言い訳もできそうです。

* * *

ここ最近、自分の人生を振り返って、「もっと違った生き方があったのではないか?」と思うことが多くなりました。

大学生の頃に聞いたRCサクセションの「自由」という歌が好きでした。

だって俺は自由、自由、自由
短いこの人生で
いちばん大事なもの
それは俺の自由、自由、自由

でも、その自由の手に入れ方を教えてくれる人はいませんでした。

小中学生のころ、電子工作とかマイコンとかが好きだったので、何となく大学の専攻もその系統に進みました。

しかし、入学してからは学業に全く興味が失せ、自分の言葉では「世の中を知る」、周囲から見れば「ちゃらちゃら遊ぶ」ことに夢中になりました。

(成果も出ないのに)合コンやダンパに通ったり、バイクや安物の車を乗り回したり、パチンコ、パチスロに明け暮れたり、安スナック通いをしてみたり、そして金がなくなったらバイトで小遣い稼ぎ。

授業にはほとんど出ませんでしたが、卒業はさせてもらいました。

バブルの頃でしたから、私のような大学生時代を過ごした人も多かったことでしょう。(今のまじめな学生の方から見れば、けしからん限りですね。)

就職もただ流されるような感じでした。「自分が何をやりたいか」なんて考えることもなく、勤務地や「職場の快適さ」みたいな、どうでもいいことにこだわって選びました。(このあたりは、今の学生さんも同じみたいですが。)

そんな感じで就職したので、たいして仕事にも興味は湧きませんでした。(興味があるフリはしていましたけど。)要領よくこなすことは得意だったので評価をしてくれた人もいましたが、勤務態度はあまり良い方ではなかったので、眉をしかめる人も多かったはずです。

帰宅後や週末は、相変わらずギャンブルと酒に明け暮れます。(ギャンブルで生計をたてようなんて、本気で考えていました・・・)

会社組織に縛られて生きることを心の中で拒否しつつも、他に生きるすべを知らなかった自分の、せめてものあがきだったのだと思います。

身を滅ぼすところまで行かなかったのは、良くも悪くも、長い学校教育の中で植え付けられた「自制心」が働いたからだと思います。

* * *

長々と自分の恥ずかしい過去について書きましたが、何が言いたかったかというと、そんな自堕落な生活を送っていた20代の自分に対して、

「お前が欲している自由を手に入れるための唯一の方法は、自分自身で金を稼ぐ手段を手に入れることだ。
しかしその手段には、ギャンブルで稼ぐなんてバカなもの以外にもたくさんある」

と教えてあげたかったということです。

もちろんそんなことは、タイムマシンがないとできませんが。

「将来の自分」からそう教えられた当時の自分は、

「じゃあ、具体的にどんな方法があるんだ?
自分で起業するなんてしんどくてリスキーなことはやりたくないし、士業の資格を取ったって結局いろんなしがらみに縛られれるだけだろう?」

と反論したかもしれません。

株式投資にしても、先に書いた通り当時はまだ「サラリーマンが自由に株式投資する」環境も整っていませんでしたし、仮に始めていてもITバブル崩壊で退場していたかもしれません。

「あと数年待てばネットで自由に株式売買できるようになるし、日本株だけでなく、急成長する中国株や、長期的に利益を上げている米国優良株も自由に買える時代が来るから、無駄遣いせずちゃんと貯金しておけ」

とでも説教するでしょうか。(ここまでくると、タイムマシン物の物語になってしまいますね。)

* * *

大学生時代、「世の中を知る」ことに夢中になっていた自分に説教できるとしたら、何を言うでしょうか。

「世の中を動かしているのは、結局、金。自由になりたいのなら、金を使うことではなく、金を稼ぐことに頭を使え。ていうか、お前卒業した後、毎日何をしたいの?何となく就職しても、やりたくない仕事をする毎日が続くだけだぞ。」

とでもいうでしょうか。

そういわれたところで、結局フツーに就職するくらいしか金の稼ぎ方を知らないので、今と同じようにどこかの会社にフツーに就職することになるのでしょう。まあ、もうちょっと生涯賃金が高そうなところを真剣に探したかもしれませんが。

資金と経験のある50代の今の自分でさえ起業なんてやるつもりはないのですから、当時20代の自分にそれができたとも思えません。

「サラリーマンとして生きることを選んだのだから、そのサラリーマンの仕事に本気で取り組んでみろ。
将来社長になるつもりで必死でやってみろ」

とは言わないと思います。

せいぜい中間管理職で終わるのなら、もらえるお金は人によってそう変わりません。

「経営層」以上に出世するのは、自分の力だけでどうにかなるものではなく、結局は他人次第です。もちろん自分自身の努力も必要ですが、必ず報われるわけではありません。

毎日残業でくたくたになったうえに休日出勤までしていては、株式投資のために時間を使う余裕もなかった可能性が高いでしょう。私を株式投資の世界に導いてくれた、邱永漢氏、ロバート・キヨサキ氏、そしてバフェット氏との「出会い」もなかったかもしれません。

* * *

「もっと違った生き方があったのではないか?」と思うものの、「自ら道を切り開く」力もなかった自分にとっては、結局こういう生き方しかなかったのかなとも思えます。

いずれにせよ、過去は変えられません。

自分が夢中になれる株式投資に出会えたことに感謝して、やるべきことをしっかりやっていきたいと思います。(一生懸命やったからといって成果が出るわけではないのが投資ですが。)

投資と人生は自己責任で。

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