アマゾンのたどり着く先は?

成毛眞さんの「Amazon 世界最先端の戦略がわかる」を読み切りました。

小売り、AWS、物流とありとあらゆる業種に次々と進出するアマゾンは、なかなかその全貌がつかめません。

成毛氏によると、ベゾス氏さえもその全貌をとらえられていないのでは、とのことです。

しかし、その本質が何かについて、本書を読むことでなんとなく理解することができます。

アマゾンの本質は、「顧客のためになることなら、資金力とテクノロジーを使って、なんでもやる」ということです。

ある業種に参入するかどうかの判断も、もし既存の企業よりアマゾンの方がうまくやれて、それが顧客のためになるのなら参入するし、逆にそうでなければ参入しない、というだけなのです。

また、様々な事業が、それぞれ独立してバラバラに動いていることも特徴です。日本の大企業のお偉いさんが大好きな「シナジー効果」なんかは狙っていません。これはベゾス氏の強い意向によるものとのことです。

もし独禁当局によって分割されたとしても、まるでアメーバーのように分割した個々の事業が増殖を続けると思われます。

本書を読んだ上で、投資家としてどう対応していけばよいかについて考えてみたことを書きます。

アマゾンは最終的にどこに落ち着くのか

現在のアマゾンは、AWSをはじめとする既存事業で稼いだキャッシュを、新たな設備投資にじゃぶじゃぶつぎ込んでいるフェーズです。株主への還元は全く行われていません。

いずれはその流れも緩やかになり、還元フェーズに移行するのでしょうか?

アマゾンの強みが、「顧客のために世の中を変化させていく」ことにあるのなら、永遠に変化のための投資を続けていくかもしれません。

それはいつまで続くのか?もしかしたら、地球を食い尽くすまでかもしれません。

逆にもしアマゾンがどこかで還元フェーズに移行して、その変化のペースを緩めるのなら、その時はアマゾンを脅かす新規参入者が現れるときかもしれません。

どちらにせよ、「アマゾンに投資しておけば、いずれは安定した利益還元を享受できる」と考えるのは楽観的かもしれません。

アマゾンに脅かされない業種・企業は?

10年後、20年後も安定して利益を上げ続けるであろう「永続的企業」に投資することが、長期投資家の目標だと思います。

しかし、アマゾンエフェクトがあらゆる業種に及び、従来永続的と考えられてきた企業も次々とアマゾンに侵食されています。大手小売り、ブランド食品、そして大手物流とか。

このような状況で長期投資家がとれる選択肢は、「アマゾンに脅かされない企業を見つけて投資する」か、もしくは、いっそアマゾンへ投資するかしかありません。極論ですけれど。

アマゾンそのものへの投資は、上にも書いたように、将来報われるかどうか不明です。

では、アマゾンに脅かされない(と思われる)企業にはどんなものがあるでしょうか。当ブログの注目銘柄を中心に見ていきます。

倫理的に手を出しにくい業種

カジノ(3918.HK)、たばこ(PM)、アルコールなど倫理的に問題がありそうな業種には、アマゾンは手を出しにくい(出せない)と考えられます。

ニッチ

香料・香味料の大手IFFとか、コショウ等の調味料メーカMKCとか。ねじや工具を販売するFASTなんかも加えてよいかも。

インフラ

鉄道(UNP)やパイプラインといったインフラは、土地買収や認許が必要なため、資金さえ投入すれば新たに作れるというものではありません。したがって、アマゾンといえど同じようなものを作ることは難しいでしょう。(もっとも、アマゾンは海底ケーブルまで自社で敷設していますが。)

アマゾンはトラック輸送、航空輸送、そして海上輸送にも進出しています。UPSやフェデックスが脅威にさらされています。

しかし、内陸部の重量物の輸送において鉄道にコストで勝ることは、当面難しいと思います。

もし鉄道が脅かされるとすれば、(アマゾンが作り出した)世の中の変化に伴い、石炭とか自動車などの重量物輸送の需要自体が少なくなるという形だと思います。

許認可事業

ウェイストマネジメント(WM)のような許認可事業(ごみ・廃棄物処理)も、簡単には参入できないでしょう。また、消費者から見れば「消費した後」の始末なので、アマゾンの関心が向く可能性も低いでしょう。

でも安心はできない

10年前の我々が現在の世の中を想像することが難しかったように、現在の我々がこの先10年後、20年後の世の中を予想することは困難です。

「アマゾンに脅かされないと思われる企業」を挙げてみましたが、これらの企業に投資したまま、仮に「10年間安心して服役できるか?」といういつもの問いをしてみれば、やっぱり自信はないですね。

長期投資家もあぐらをかかず、世の中の流れをよく見続ける必要がありそうです。特にテクノロジーによる変化については要注意です。

そして、それに疲れたのなら、潔くインデックス投資に移行した方がよいですね。

投資と人生は自己責任で。