[書籍紹介] 定年後の不安を一掃する ― 「定年バカ」

「人生100年時代」をむかえ、世の中「定年退職」関連の書籍や情報であふれかえっています。

定年後、老後の様々な不安をあおり、「そうならないために早くから備えましょう」という論調のものが多いです。

私もそういう書籍を何冊か読んできました。

しかし、今回読んだ「定年バカ」という本は、そういう不安を一掃し、「自分が好きなように過ごせばいい」のだと気づかせてくれます。

定年バカ ― 勢古浩爾

定年後の不安をあおる数々の有名な書籍を、実名をあげてバサバサと切り捨てています。切り捨てられた本の一覧です。(切られた本はたくさんあるので、漏れがあるかもしれません・・・)

  • 55歳から始める最高の人生 ― 川北義則
  • 定年後を極める ― 達人12人のノウハウ&読者71人の痛快体験記 ― 日経新聞社マネー&ライフ取材班
  • 定年から輝く生き方 ― 一生モノの成功法則 ― 帯津良一
  • 男がつらいよ ― 絶望の時代の希望の男性学 ― 田中俊之
  • ライフシフト ― 100年時代の人生戦略 ― リンダ・グラットン&アンドリュー・スコット
  • 幸福な定年後 ― 足立紀尚
  • 定年男子定年女子 ― 45歳から始める「金持ち老後」入門! ― 大江英樹+井戸美枝
  • 下流老人と幸福老人 ― 資産がなくても幸福な人 資産があっても不幸な人 ― 三浦展
  • 定年後の8万時間に挑む ― 加藤仁
  • それでいいのか蕎麦打ち男 ― 残間理江子
  • 終わった人 ― 内館牧子
  • 60代にしておきたい17のこと ― 本田健
  • 精神科医が教える定年から元気になる「老後の暮らし方」 ― 保坂隆
  • 定年するあなたへ ― 佐々木常夫

このブログで紹介した書籍も何冊かありますね。

「定年バカ」の著者は、もともとこれらの定年本は読んでいなかったとのことですので、同書を書くにあたってこれらの書籍を読んだのでしょう。

これらの数々の定年本で主張されていることを「大きなお世話」とか「アホか」といって切り捨てているのが爽快です。

定年後に「有意義な人生」を。「生きがいをもって」。「いきいきと輝く人生を」。「楽しまなきゃ損」。といって、とにかく忙しく何かをしていなければ「ダメな定年後人生」であるかのような論調に対して、「大きなお世話」と反論しています。

こういう定年本に取り上げられるのは、毎日スケジュールをびっちり埋めた人とか、退職後起業して成功した人とか、あるいは逆に、貧困に陥って日々の生活もままならない人とか、高低両極端な人たちです。

そうでない、「普通の定年退職者」を取り上げてもおもしろい話にはなりませんが、実際にはそういう人がほとんどであり、そういう人の好みもひとそれぞれ違うのだから、他人がああしろ、こうしろというのは「大きなお世話」というわけです。

「不安」を煽るだけ煽っておいて、提案する「解決法」は、著者たちが頭の中だけで考えた「一般論」でしかなく、個々の人に当てはまるわけではない、というのが批判のポイントです。

この「定年バカ」という本、中古本をアマゾンで注文していたのが昨日届いたのですが、あまりに爽快で、また腹落ちもしたので、一晩で一気に読んでしまいました。

自分自身のこと

先の5月の10連休や、このお盆休みは、退職後のシミュレーションとして、旅行にも行かず普通に家で過ごしています。

特に今は暑いですから、外出するのは、外にご飯を食べに行くときか、近所のジムに通うときくらいです。

あとは、エアコンが効いた家の中で、動画を見たり、 (今は少しおなかいっぱいですが) 本を読んだり、投資関係の調べ物をしたり、ゲームをしたり、そして昼間でも眠くなればちょっと昼寝をしたり。

おそらく、こんな生活をずっと続けても、そんなに不満やストレスはたまらないのだろうなという気がしています。あくまで私の場合、ですが。

「会社での人間関係がなくなる定年後は、意識的に社会や人とのつながりをつくるべし」ということを言う人もいますが、私の場合はそれほど他人との関りは必要ないのかなと思っています。

友人空間の人間関係は、ギブ・アンド・テイクですから、こちらかも何かを提供してあげる必要があります。そもそも、たいして付き合いたくない人との付き合いを持てば、トラブルの元です。

「定年バカ」の中でも、「地域デビューなんかしない方がお互い幸せ」と書かれています。地域の人って、まさに「たまたま近くに住んでいるだけの人」ですから、価値観も好みも違いますし、無理にお付き合いしようとしても、ストレスがたまるだけです。

関わりたくない人と仕方なく関りを持つ、というのは、正直サラリーマン時代だけで十分です。(まだ終わっていませんが・・・)

学校時代の同級生でも、ずっと付き合いを続けていた人ならともかく、ずっと疎遠だった人など、昔の思い出を共有しているだけの関係であって、ほとんど赤の他人と同じでしょう。

どうしても人と会話したければ、お金の許す範囲で、近所の安い飲み屋に行って、店主や他のお客さんと、当たり障りのないお話をしてもらえば十分です。(飲みすぎで迷惑をかけないようにしなければなりませんが)

いわゆる「趣味」も、50年生きてきて、ずっと続けているものはないですし、しいて言えば今は「投資が趣味」といえるくらいです。

その投資も、(バフェットのように)毎日ニュースや決算書を読みふけるほど熱心ではありません。年1回の決算チェックと、あとはニュースや株価のチェックで十分だと思っています。

別に何もやりたいことがなければ、やらなくてよい。何もしないといっても、実際には一日何度かご飯を食べて、お風呂にも入るし、ニュースを見たりくらいのことはするはずです。

もし今後、世の中のために何か貢献したい、という気持ちが芽生えてきたら、その時にやればよい。別にやりたくないのに無理に取り組んでも、自分も周囲も迷惑なだけです。

小学校からはじまる学校生活と、30年近くに及ぶサラリーマン生活で、「やりたくないこと」をずっと我慢してやってきたわけです。

死ぬまで残された最後の時間くらい、人様に迷惑をかけないのなら、別に何をして(何もしなくて)過ごしても、文句を言われる筋合いはないはずです。

世の中には、人の不安をあおることでお金儲けをしている人がたくさんいます。

50年、60年も生きてきたのだから、他人の言うことを鵜呑みにせず、自分ことは自分で決めればいいのだと思います。