投資家、とくに長期投資家にとっての必読本と呼ばれているものの中に「株式投資の未来」(ジェレミー・シーゲル)があります。
この本には参考にすべきことがたくさん書かれていますが、その中の一つに
- 株式の長期リターンを考えるときに、キャピタルゲインだけを見るのではなく、配当を都度再投資した場合の「トータルリターン」を見る必要がある。
というものがあります。
当たり前といえば当たり前なのですが、ここで問題となるのは、ネットで得られる株価チャートは「キャピタルゲイン」しかあらわしておらず、配当を再投資した際の「トータルリターン」をあらわしたチャートがない、ということです。
「株式投資の未来」には、S&P500指数についてキャピタルゲインとトータルリターンを比較したチャートが掲載されています。しかし、個別の銘柄については記載されていません。
そこで、少し調べてみたところ、個別の銘柄について簡単にトータルリターンのチャートを作る方法が分かったので、紹介してみます。ただし、対象はYahoo Financeで調べられる銘柄だけです。
トータルリターンのチャートの作り方(ユニオン・パシフィック UNP の例)
先日取り上げたユニオン・パシフィック(UNP)を例にとって、手順を追ってご説明したいと思います。
まず、Yahoo Financeへ行って、お目当ての銘柄を検索します。
そして、次の手順でCSVファイルをダウンロードします。
① “Historical Data”のタブを選択します。
② チャートを作りたい期間を”Time Period”をクリックして選択します。例ではちょうど10年分を選択しています。
③ チャートの頻度(”Frequency”)を選びます。長期の傾向を見たいので、月次(”Monthly”)を選びます。
④ “Apply”ボタンを押して、ウィンドウの下の方にデータが表示されるのを確認します。
⑤ 最後に、”Download Data”を押して、CSVファイルをパソコンにダウンロードします。
CSVファイルができたら、ExcelかGoogleスプレッドシートで読み込みます。Googleスプレッドシートで読み込んだ例をリンクしておきます。
なお、2行目にごみのデータ(例だと2008-01のデータ。各値が”null”になっている)が残ることがありますので、この行は削除しておきます。
さて、ここで使うのは”Date”列(A列)と”Close”列(E列)と”Adj Close”列(F列)です。
“Close”はいわゆる終値です。では”Adj Close”はというと、Yahoo Financeのページに以下のように注釈があります。
“**Adjusted close price adjusted for both dividends and splits.”
つまり、「配当と株式分割を調整した調整済み終値」ということです。この値が今得たいと思っている「トータルリターン」に相当します。
ただし、この値は「期間の最後」を基準に計算されているので、これを「期間の最初」を基準にして計算しなおします。
具体的には、期間の最初(例だと2008-02-01)の”Close”と”Adj Close”をそれぞれ100%として、各行の値との比率を求めます。(H列とI列)計算式はGoogleスプレッドシートを見てくださいね。
さて、配当なしのキャピタルゲインと配当再投資したトータルリターンについて、期間の最初を100%としたデータ列ができたので、これをグラフにします。
10年間で、それぞれ以下のように伸びています。
- 配当なしのキャピタルゲイン ― 452.87%
- 配当再投資したトータルリターン ― 555.63%
その差は大きいといえば大きいですが、ざっくりした傾向をとらえるだけなら、この銘柄の場合はあまり関係ないかもしれません。
なお、10年で555.63%ということは、年率で19%弱の成長ということになります。結構よい数字ですね。
キャンベル・スープ(CPB)の例
もう一つ、キャンベル・スープ(CPB)についてチャートを作ってみましょう。この銘柄はどちらかというと成長を狙うというよりも配当を狙いに行く銘柄なので、両者に大きな差が出るかもしれません。
- 配当なしのキャピタルゲイン ― 146.76%
- 配当再投資したトータルリターン ― 196.88%
この銘柄のキャピタルゲインが少ないことは予想通りでしたが、トータルリターンも結構低いですね。
10年で約2倍ということは、年率で約7%しか成長しないということです。
ホーメル・フーズ(HRL)の例
過去取り上げたホーメル・フーズ(HRL)の例です。
- 配当なしのキャピタルゲイン ― 340.28%
- 配当再投資したトータルリターン ― 415.28% (年率約15%)
ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)の例
さらに、こちらも過去取り上げたジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)の例です。
- 配当なしのキャピタルゲイン ― 237.83%
- 配当再投資したトータルリターン ― 323.66% (年率約12.5%)
もちろん結構よい数字ですが、UNPやHRLに比べて低いのは意外でしたね。もっとも、選択する期間によって結果は変わってくるのでしょうけど。
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