同業大手買収を発表し株価を10%下げたIFFは、「買い」か?

香料、香味料の世界大手International Flavors & Fragrances(IFF)が1Qを発表しましたが、同時に発表した同業Frutarom社(イスラエル)の買収の報を受けて、株価が10%以上下落しました。

買収額は71億ドル、日本円でだいたい8,000億円。武田製薬の7兆円の買収には一桁及びませんが、それでも相当な額です。この買収がIFF社にとって、吉と出るのでしょうか、あるいは凶と出るのでしょうか。

 

買収する側のIFFは過去記事でも取り上げた通り、安定して潤沢な利益を上げている企業です。

これに対して買収される側のFrutarom社(frutarom.com 、テルアビブ市場、ティッカーFRUT)は、急成長中です。

(FRUT社IRより)

関連する数字を表にまとめてみました。

  1. 両社のニュースリリースによると、FRUTの1株に対して、$71.19の現金と、IFFの株0.249株が割り当てられます。
  2. FRUTの株数は59,632,000株(表中(8))。これに$71.19をかけると、$4,245 Mです(表中(2))。こんなにたくさんの現金はIFFにありませんから(表中(3))、借金で補うことになるでしょう。
  3. また、この株数に0.249をかけた14,848,368株(表中(8))が、IFFの株式として付与されます。新規発行するにしろ金庫株を持ち出すにしろ、既存の株主にとっては希薄化が生じます。
  4. 買収前のIFFの利益は$296Mです。これを、IFFの買収前の株数79.379,000で割るとEPSは3.73です。ただし、決算書上は3.72です。この違いは、対象期間のずれによるものでしょう。無視します。
  5. 買収後のIFFの利益は、BRUTの利益$152Mを加えて、$447Mです。これを、増えた株数94.218,368で割ると、EPSは4.75に増えます。
  6. PERでいうと、買収前の34.11から、買収後は26.73に改善されます。

どこかで間違っていないかちょっと不安ですが、話を進めます。

株式発行に伴う希薄化分だけを考えると、IFFの株主にとっても不利な買収ではないと思います。

問題は、利益の約15年分にも相当する現金支出です。(ほぼ同額が負債として増えることでしょう。)

株価の下落はこのあたりを見込んでのことなのでしょう。

すぐに買うべきでしょうか?

先日ペットフード会社の買収を発表したゼネラルミルズ(GIS)の株価は、その後もじりじりと下げています。

相場のことはどうなるかわかりませんが、IFFの場合もこの先しばらくは、だらだら下げるかもしれません。

IFFにしてみれば、急成長中のライバルは小さいうちに買収してしまいたいというところなのかもしれません。同社の立場では、買収するリスクだけではなく、しないリスクも考える必要があるのでしょう。

継続観察していきたいと思います。

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