EUに続いて、米国の独禁当局によるGAFAへの圧力が高まっています。
アマゾン(Amazon; AMZN)について整理すると、以下の通りです。
- アマゾンを調査するのは米連邦取引委員会(FTC)の担当。なお、グーグルとアップルは司法省(DOJ)が担当。フェースブックはFTCとのこと。
- アマゾンにかけられた疑惑は、「出店企業から販売情報を取得し、自社の販促活動に使った」こと。
後者の疑惑については、例えばアマゾンのマーケットプレイスに出品していたら、同じ商品をもっと安い値段でアマゾンに出品されたとか、AWSを使ってビジネスをしていたら、アマゾンに同じようなサービスをもっと安い価格で提供された、なんてニュースを目にすることがありますね。
アマゾンが、その複数の事業間で(不公正に)情報をやり取りすることで競合に不利益を与えているのだとすれば、当局による処分は「アマゾンの分割」ということになるでしょう。
では、分割されてしまうとアマゾンはどうなるのか?
元日本マイクロソフト社長の成毛眞さんがアマゾンについて書かれた本に、その問いに対するヒントが書かれています。
万が一にもアマゾンへの富とデータの集中が規制され、分割されたらどうなるのだろうか。このことについて、米誌『ウォール・ストリート・ジャーナル』で金融を担当するデニス・バーマンは、ツイッターにこんなジョークを書き込み反響を呼んだ。
「アマゾンが2025年に分割されたとしたらどうなるだろう。商取引、ウェブサービス、メディア、物流サービス、人工知能(AI)、ゲノム解析・・・分割しても(それぞれの領域で)独占か」
amazon 世界最先端の戦略がわかる(成毛眞)
特にウェブサービス(AWS)については、売上こそ同社全体に占める割合は少ないものの、利益はその大半を生み出していることは、同社の決算書にも開示されています。
AWSの事業上の強みは、圧倒的な「規模の経済」です。
他社に比べて圧倒的な低価格を提供しつつも、その規模によって莫大な利益を上げています。この低価格ゆえに、2番手のマイクロソフトにも大きく差をつけており、その背中は遠いようです。
したがって、少なくともAWSだけ見ても、仮に分割されても十分な競争力を保っていけるでしょう。
さらに言えば、AWSの唯一の盲点は、先にあげた「AWS上でビジネスをすることによって、競合であるアマゾンに情報を与えること」を嫌がる企業による「反AWS」の動きです。
しかし、分割されてしまえば、そんな懸念もなくなるでしょうから、むしろプラスに働くかもしれません。
AWS以外の事業は、圧倒的な独占力を持っているものの、まだ十分な利益は上げていないようです。AWSで稼いだキャッシュを、他の事業の設備投資にじゃぶじゃぶつぎ込んでいる状態です。
これらの事業がAWSと切り離されたとき、財務的に問題がないかはちょっとわかりませんね。
しかし、もともとAWSは自社向けに作ったプラットフォームがたまたま他社にも使えた 「偶然の産物」ですから、AWSがなくとも、残りの事業を発展させるビジョンがベゾス氏の頭の中にあるのかもしれません。
もう一つ。
米国独禁当局は、アマゾンによる競合他社の排除(独占)を懸念しているのですが、普通これらの独占をよしとしないのは、「それが消費者のためにならない」からです。
しかし、アマゾンは自らを「地球上でもっともお客様を大切にする企業」としており、いずれの事業も客が求めるものを迅速に実現することによって、世の中に受け入れられています。
したがって、消費者のためを考えるのなら、必ずしもアマゾンに圧力をかけることが正しいとは言い切れないかもしれません。
例えばフェースブックは、個々のユーザを「お客様」と考えているわけではなく、あくまで自らが金儲けするためのデータを作り出す「商材」としか考えていないといわれています。この辺りが、アマゾンと決定的に異なる点かもしれません。
5年チャート:
この先GAFAの株価がどう推移していくか、私には予測がつきません。
ただ、もし大きく下げることがあれば、成毛氏の言う「21世紀のローマ帝国」たるアマゾンの株を、10年先を見据えて保有してみるのもよいかもしれません。
投資と人生は自己責任で。
参考にした本: アマゾンの強みが何か、一冊でさらっと学べそうな本です。(まだ全部読んでいないので「学べそうな」と書きました。)