ディフェンシブで比較的安全と思われている企業でも、大きなスキャンダルを発生させ、その経営が危うくなることがあります。
それらの企業の株価が、スキャンダルの後どのように推移したかを見ていきたいと思います。
古いものから順にみていきます。それぞれ、チャート上の赤矢印がスキャンダルの起きた時期です。
British Petroleum (BP) - 2010年4月、メキシコ湾原油流出事故
東京電力(9501.T) - 2011年3月、福島原発事故
東洋ゴム(5105.T)― 2015年3月、建物用免振ゴムデータ偽造、同10月、防振ゴムデータ偽造
(中国)四環医薬(0460.HK)― 2015年3月、会計不正疑惑で取引停止
チポトレ・メキシカン・グリル(CMG) - 2015年10月、食中毒事件
感想
スキャンダルの内容や経営に与える度合いは様々なので一概には言えないと思いますが、いずれの企業もスキャンダルが発生するまでは、「安定してキャッシュを生み出すキャッシュ製造マシン」と考えられていたはずです。
スキャンダルの度合いが軽ければ(つまり、一時的な業績低下ですむ程度ならば)、それはむしろ買い時を意味します。
しかし、ここにあげたいずれの場合も、株価が元に戻るのに非常に時間がかかりそうです。(あるいは、そもそも戻らないかもしれない・・・)
いずれのスキャンダルも、外部にいる株主には到底事前には分かりっこないことばかりです。(東電やBPの例は内部の人間すら想定していなかったでしょうが。)
このあたりが、ETFではなく個別銘柄を買うことのリスクかもしれません。
(東洋ゴムは「安定したキャッシュ製造マシン」とは、ちょっと違うかもしれませんが。同社の場合は、スキャンダルを起こした部門も主力部門ではなかったため、株価の戻りも順調のようです。)
では、どうすればよいのか?
まず、スキャンダルの報を耳にしてから、逃げられるかどうかという点についてみてみましょう。
BPの場合は、原油流出事故の直後株価は約半分まで落ち込みますが、しばらくしてリバウンド(回復)しています。つまり、慌てて逃げようとして売った人は損をしたということ。
東電の場合は、あまりに損失が大きすぎて、逃げようにも「時すでに遅し」です。
四環医薬の場合は、そもそも香港市場から「取引停止」を食らっているので、それが解除となるまでは動きようがありません。しかし、理由が会計不正疑いであったものの、その後ちゃんと決算を出していますから、解除後すぐ売るよりは、そのままずっと持っていたほうが吉だったのかもしれません。
※ 香港市場に上場する株式の場合には、この突然の「取引停止」というリスクが付きまといます。大事な資金で購入して、いざというときに長期間(場合によっては2,3年もの間)換金できないという事態に陥ることがあります。
CMGの場合は、株価が700から600とか500に落ちるまでにある程度時間がかかっていますから、この間に「だめだ」と判断できれば、売り逃げることもできたでしょう。ただし、数店舗での食中毒事後の発生を、すぐに「企業全体の危機」と判断することができれば、の話です。
CMGの例外はありますが、全体として、慌てての判断をしてもあまり良い結果にならないように見えます。
どうせ素人の長期投資なのだから、プロ並みの「素早い判断」を前提にすることが無理だと思うのです。それに、キャピタルゲインがたんまり乗った状態であれば、税支払いも発生しますし。
唯一の事前の対抗策として、銘柄数を分散することが挙げられます。
いろいろな書籍では、個人が一人で管理できる銘柄はせいぜい数銘柄であり、あまり手広く買い広げるよりも、少ない銘柄に注力すべきとの意見が書かれています。(邱永漢さんもおなじようなことをおっしゃられていたと思います。)
しかし、例えば5銘柄を均等に保有していて、そのうちの1社がスキャンダルによって株価暴落なんてことになると、資産形成を目指す個人としては相当な痛手になると思うのです。
このブログでは、主に決算書だけを頼りに、あまり手をかけずに投資先銘柄を選択し、投資し、そしてモニタし続けることにより、できれば十数銘柄くらいまで手を広げられるようなやり方を提案していきたいと考えています。
追記: スキャンダルといえば、某自動車や某鉄鋼会社は?と思われるかもしれません。しかし、これらの企業は永続的とは考えていないので、ここではふれていません。