「賃貸と持ち家、どちらが得か」という命題について、おそらく正解なんてものはないのでしょう。
しかし、早期退職を考えるのであれば、もし持ち家を買うのなら退職前にローンを組まなけらばならないので、意思決定するまでにあまり時間がありません。
2つのケースで比較
以下のような2つのケースで比較をしてみました。
- ケースA(賃貸) ― 家賃15万円で20年暮らす。
- ケースB(持ち家) ― 築10年の中古マンションを4,000万円で購入。20年ローンを組んで、ローン返済と同時に売却。
どちらも、首都圏、中部、近畿地方などの大都市圏で、一等地ではないものの、生活にそれほど不便しないレベルの物件に住む場合に相当すると思います。
もちろん、2つのケースで同じレベルの住居に住めるというわけではないと思います。仮に4000万円の物件を賃貸に出して15万円の家賃をもらうとすれば、表面利回りはたったの4.5%。不動産投資としてはあまりうまみがない条件になります。
ただ、2LDK、65平米くらいの物件を、実際に借りたり、買ったりする場合に、典型的なケースだと考えて、両者を比較してみました。
設定した諸条件
以下のような条件を設定しました。
- 投資利回り 5% ― 手元のキャッシュを株式で運用した場合、このくらいの利回りが期待できるでしょう。
- マンションの価格下落率(築10年→30年) 50%。reins.or.jpのページを参考にしています。
- 固定金利 2.62%。頭金なしのフルローン。「通期引下げプラン」、「元利均等」。月々の支払214,307円。住信SBIネット銀行のシミュレーションのページで試算しました。
ケースA・賃貸の場合の支出(現在価値)
- 1年目の支出 15万円×12か月 = 1,800,000円
- 2年目の支出(現在価値) 1,800,000 × (1 – 0.05)^1 = 1,710,000円
- 3年目の支出(現在価値) 1,800,000 × (1 – 0.05)^2 = 1,624,500円
- ・・・・
- 20年目の支出(現在価値) 1,800,000 × (1 – 0.05)^19 = 679,236円
20年間の合計(現在価値): 23,094,507円
ケースB・持ち家の場合の支出(現在価値)
- 1年目の支出 214,307×12か月 = 2,571,684円
- 2年目の支出(現在価値) 2,571,684 × (1 – 0.05)^1 = 2,443,100円
- 3年目の支出(現在価値) 2,571,684 × (1 – 0.05)^2 = 2,320,945円
- ・・・・
- 3年目の支出(現在価値) 2,571,684 × (1 – 0.05)^19 = 970,434円
20年間のローン支払い合計(現在価値): 32,995,430円
ただし、この場合、築30年の物件が残ります。下落率50%なので、売却時の価格20,000,000円。現在価値に直すと20,000,000×(1 – 0.05)^19 = 7,169,718円
したがって、20年間の支払合計(現在価値)は、32,995,430 – 7,169,718 = 25,825,711円となります。
金銭的にはほぼ同じ
ケースA(賃貸)の場合の20年間の支出を現在価値に直すと 23,094,507円
ケースB(持ち家)の場合の20年間の支出を現在価値に直すと 25,825,711円
ケースC・仮にローンを組まずに即金で買った場合は、40,000,000 – 7,169,718 = 32,830,282円
ローンを組めば、賃貸も持ち家も、現在価値に直した支出額では大差ないということになります。
一方、ローンを組まず即金で買った場合には、株式での運用益の機会を逃すことから、金銭的には数百万円レベルでの損であることがわかります。
やっぱり買う必要はないのかな?
少なくとも金銭的にはそう思ってしまいます。
デメリット同士で比較すれば
賃貸のデメリット
- 歳を取ってくると、緊急連絡先になってくれる人がみつからず、借りにくくなるかもしれない。
- 賃貸用の物件と分譲用の物件では、品質的に分譲用に分がある。
持ち家のデメリット
- 何かの理由で引っ越したくなっても、簡単には引っ越せなくなる。
- 特に災害時に、不便な生活を長期間強いられる可能性がある。
やはり賃貸かな?
今後日本では人口が減っていく一方で、高齢者の数は増え続けることを考えると、「緊急連絡先になってくれる人がない」という状態でも、家を貸さなければ、賃貸業としてやっていけなくなる可能性は高いと思います。そして、それを補うための代行サービスも、もっと普及してくるでしょう。
要は、貸主として、賃借人に万が一のことがあった時に、ちゃんと後始末できるようにすればいいわけですから、この辺りも環境が整ってくるのではないでしょうか。核家族化、少子化、未婚化が進む中で、いつまでも親族に頼ることを前提としたサービスでは、賃貸業も成り立たないでしょう。
また、家を買ったところで、ずっとそこに住み続けられるとは限らず、重度の介護が必要になれば老人ホームに移らなければならない可能性もあります。ならば、手元に持ち家よりも、キャッシュを持っていた方が有利と言えます。
海外なら事情は別
時とともに不動産の価値が下がっていくというのは、日本ならではの事情かもしれません。
国によりますが、イギリスなんかでは、古い家をちゃんとメンテしていく文化があり、不動産の価値も時とともに上がっていくのが普通とよく聞きますね。
しかし、ビザの問題もあり、海外移住といっても自由に国を選べるわけでもありません。
なかなか、悩みは尽きません。
投資と人生は自己責任で。
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