この本の邦題は「フードトラップ」ですが、原題は”Salt, Sugar, Fat”(塩、砂糖、脂肪)です。
ケロッグ(K)、クラフト(現クラフト・ハインツ)(KHC)、コカ・コーラ(KO)、ハーシー(HSY)、キャンベル(CPB)といった食品会社や、フィリップモリス(PM)などのたばこ会社に投資する方に、一読をおすすめする本です。
これらの企業が、原題にある「塩、砂糖、脂肪」を使って消費者を虜(中毒)にしていく様がありありと描かれています。
それらの効果について本文から抜粋します。
・塩は、最初のひと口で味蕾に生じる刺激感を増大させる。
・脂肪は、われわれの食べる量がつい多くなると言う微妙な作用を持つ。
・砂糖は、脳の興奮作業を持つ。
加工食品はこれらの3要素がなければ、苦味、金属味、渋味ばかり目立ち、とても食べられたものではありません。
しかしこの3要素をうまく調合し「至福ポイント」を作り出せば、まさに「やめられない、止まらない」食品に仕上げることができるのです。
こうしてできあがったのが、甘くて子供に人気の朝食用シリアル、様々な清涼飲料水、クッキーやポテトチップスなどのお菓子、プリンなどのデザート、TVディナー(電子レンジでチンするだけで食べられるあらかじめトレーに入ったインスタント食品)などです。
もちろん、塩も砂糖も脂肪も、とりすぎれば身体に悪いことは明確ですし、逆にそもそもそれほどの量をとらなくても健康に生きていくことができます。
(ケロッグの創業者ジョン・H・ケロッグは、1800年代にみられたソーセージ、ステーキ、ベーコン、時にはウィスキーといった脂肪分が非常に多いアメリカの朝食週間を変えようと、塩も砂糖も使わず脂肪もわずかしか使わない健康なシリアルを発明し、それを世の中に広めようとしていました。しかし、弟のウィルが砂糖を入れたシリアルを試したところこれが非常に売れることを発見し、兄を裏切り、会社も乗っ取り、後のケロッグ社と、その甘いシリアル製品につながっていったというのが非常に皮肉な話です。)
これらの食品業界は、「モネル化学感覚研究所」といった学問の権威への研究費提供や食品医薬局(FDA)に対するロビー活動を通じて、塩、砂糖、脂肪にはリスクがないと言う情報を公式に発信させるようにし向けます。
それでも塩、砂糖、脂肪のいずれかに対してその危険を指摘する世論が強まることがありますが、それに対する食品会社の戦略は明確です。つまり、危険を指摘された1つの要素を減らし、それを補い「至福ポイント」を維持するためにほかの要素を増やすのです。
また、加工食品の「三大メジャー」の一つにあげられていたゼネラルフーズが1985年にたばこ会社フィリップモリスに買収されたことが示すように、加工食品業界とたばこ業界は、ともに「消費者を中毒にして」その製品を買い続けるようにさせるという点で共通しています。
だから加工食品会社やたばこ会社への投資が悪いと言うつもりはありません。しかし、これらの企業の「ブランド力」あるいは「顧客ロイヤルティ」といったものが、上に書いたようなしくみの上に築かれていることは忘れないようにしたいと思います。
よかったら押してください。