老後や退職後の人生を扱った本は多いです。
ですが、「不労所得を得て、悠々自適な老後を送ろう」と漠然と考えている長期投資家の方は、そんなあまたの老後本の中でも、この本を一読されることをお勧めします。
ちゃんと心の準備をせずに「老後」に突入すると陥りそうな「罠」について、50歳代から80歳超まで様々な「老人」たちのエピソードを交えて書かれています。
何もすることがない辛さ
様々なエピソードの背景として共通することは、以下の2点です。
- (収入の多寡にかかわらず、)金銭的に苦労する人は減ってきた。
- 昔の老人に比べて今の老人ははるかに健康的で体力もついてきた。
金銭については、十分な金融資産を持っている人はもちろんのこと、仮に蓄えや収入がなくなっても(ちゃんと世渡りできるくらいの知恵があれば)生活保護や炊き出しやその他の無料施設を利用して、そこそこ「快適、清潔」な暮らしができる環境が整ってきました。いわゆるホームレスの人でも、ひとむかし前の「レゲエのおじさん」みたいな人は減ってきて、こぎれいな恰好をした人が多いようです。
体力・健康については、栄養事情や医療の発達も関係しているでしょう。
ポイントは、お金に不自由することなく、かつ、健康であるにもかかわらず、「何もすることがない人」が増えてきているということです。
とはいえ、人生の最終ステージにいるわけですから、持っている時間は限られています。時間が限られているにもかかわらず、「することがない」という状況が生まれてくるわけです。
ホームレスとして日々熾烈なサバイバル生活を送っていた人が、支援団体の助けにより生活保護を受け、衣食住足るようになった途端、腑抜けのようになってしまったという例も挙げられています。
サラリーマンで、毎日、毎週、「仕事行きたくないなぁ。早く退職して悠々自適な生活したいなぁ」と思いながら嫌々会社勤めしている人も、退職後同じような状況になるリスクは高いでしょうね。
老人(特に男性)は皆ストーカー予備軍
お金があって、健康で、何もすることがない状態にいる人が陥る道の一つが、「ストーカー」です。
毎日通うファミレスで、若くてかわいらしいウェイトレスにちょっと親切にされて、自分に好意があると思い込み、プレゼント攻勢から始まって、彼女のブログを探し出し逐一生活を監視しだす、とか。
サークルで知り合った世話役の男性を一度家にあげたとたん、毎日何度もの電話と訪問攻勢を受ける、とか。
著者(女性)も本書の取材でかかわりあった(といっても、たった一回面談しただけの)男性からストーカー被害を受けたようです。その分野の専門家に助けを求め、「シニアストーカー予備軍に対して、やってはいけない行為」をアドバイスされています。その内容は次の通りです。
- 本人に興味を持って(持ったふりをして)話を聞かない
- 笑って(笑いかけて)接しない
- 楽しそうに(楽しいふりを)しない
- 下手に褒めたり励ましたりしない
- 体に触れない(握手もしてはいけない)
裏を返せば、女性にそういう態度をとられると、自分に興味があると勘違いしてストーカー行為に発展する可能性が高いということです。
もちろん、若い人でも同じような勘違いはしますが、老人の場合には「残された時間が少ない」ことが確定してる上に、日頃出会いがほとんどないので、「これが女性と深い仲になる最後のチャンスかもしれない」という思いから、「絶対にその相手をものにしなければならない」という強迫観念にとらわれるようです。
たかられる老人(特に男性)
女性に悪意がない場合には男性から女性へのストーカー行為になりますが、女性に悪意、つまり男性老人から金を巻き上げようとする意図があれば、今度は男性側が被害者になります。
若い頃に見合い結婚してろくに恋愛経験もなく、さして夢中になれるようなものもなく、単身で身寄りがいないか、あるいは家族と同居していても阻害されているような男性がターゲットになりやすいそうです。
「心が砂漠のように乾ききっている」と比喩されていましたが、そんな乾ききった心に「一杯の水」を差しだす女性がいれば、先ほどのストーカーの時と同じように「絶対にその相手をものにしなければならない」という強迫観念にとらわれてしまいます。
しかし、今度は女性は確信犯です。ちょっと仲良くなったころ合いを見て「実はお金に困っているの」というお決まりの文句で、1万円、10万円といった小銭を頻繁にせびるようになります。
木嶋佳苗や筧千佐子のケースは、金額が大きいことや殺人が伴っているという特別なケースなのでニュースになっているだけで、その背後にはニュースにもならないようなケースがあふれているのでは、という著者の見解です。(なお、結婚を約束していないのであれば、結婚詐欺も成立せず、小銭をせびる行為は犯罪にはならないようです。)
このような女性は、必ずしも若くて美人とは限らず、そこそこ小ぎれいなくらいで特に目立つような人でないことが多いようです。とはいえ、過去に生保の外交員とか、水商売のような接客業をしていた女性にしてみれば、恋愛経験値の少ない老人の男心を手玉に取るくらいは朝飯前なのでしょう。
まとめ
では、どう対処すればよいのか?私の考えをまとめてみます。
- 夢中になれることを探しましょう。あるいは、新しく夢中になれることを見つける能力を身につけましょう。飽きっぽい人は後者の方が大事でしょう。どうせ自分一人が楽しめばいいのです。「世間体の良い趣味」である必要はないでしょう。
- 「男のロマン」もいいですが、現実を見据えるくせをつけましょう。自分の外見を姿見で眺めてみましょう。若くもなく先もない老人に、そもそも女性が異性として興味を持つか、冷静に考えてみましょう。
- もしあなたがまだ若ければ、若いうちにたくさん恋愛経験をして(たくさんの人数を相手にするということではないですよ)、恋愛経験値を上げておきましょう。
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