[コラム][雑談] 独裁主義への収斂と資本主義の終わり?




日経新聞は、電子版の見出しをパラパラとみて、ときどき気になる記事を見るくらいなのですが、「資本主義の未来」そして「株式投資の未来」に関係しそうな記事があったので、ピックアップしてみます。

【読むヒント】世界でなぜ響く 独裁の足音 ― 編集委員 玉利 伸吾(日本経済新聞、2018/1/15朝刊)

リンク先もそのうちなくなると思うので、一部だけ抜粋しておきます。

東欧など世界各地で、強権的な指導者が次々に出現している。大衆受けする大胆な政策を打ち出す一方、権力を集中させ、政治的自由や民主主義を脅かす。独裁者が暴走し、戦争の嵐が吹き荒れた20世紀の教訓を忘れたのだろうか。

(中略)

自由と平等を基本とする民主制は、強権や独裁とはかけ離れているとおもわれている。だが、国民が自由に好き勝手な生き方をするので、規律を失い、大衆に迎合する危険な指導者が最高権力を手にしてしまう恐れがあるという。なんとも皮肉なメカニズムだ。

民主主義も独裁主義も、ともに永久なものではありません。独裁政府・専制政府を革命によって倒して民主政府が生まれ、そして民主主義の中で衆愚政治がはぐぐまれ新たな独裁政府を生むという「サイクル」を繰り返すのかもしれません。(もちろん、そのサイクルを何周もした国家はまだありませんが。)

で、何が気になるかというと、テクノロジーの発展が、独裁主義から民主主義への移行と、民主主義から独裁主義への移行にどう影響していくかということです。

テクノロジーが民主主義化を助けた事例としては、いわゆる「アラブの春」が挙げられます。SNSによって、見知らぬ同士、とくに志を同じくする見知らぬ同士が団結して、政権を倒すような事例が出てきています。

しかし、その後のアラブ諸国の経緯を見る限り、結果として健全な民主国家が生まれたとは思えません。

かたや、テクノロジーが独裁政治の「強化」を助ける例もあるでしょう。単純な軍事技術の発展にとどまらず、近年の中国のようにIT技術、個人認証技術を駆使して、「超監視国家」を作り上げるような例が、他にも出てくるかもしれません。

(今のこの時代に、中国(PRC)に行くことなど、たとえ短期の旅行であっても鳥肌が立つ人は多いと思います。)

またさらに、民主主義から独裁主義への移行をテクノロジーが推進する事例もでてくるでしょう。

独裁政府を倒したのと同じSNSが、かたや衆愚政治を生み出し、やがて最悪の独裁政治を生み出しそうなどこかの超大国が、その典型的な例になるかもしれません。

では、テクノロジーの発展は、総じて民主主義化と独裁主義化のどちらに強く作用するのでしょうか。

ご存知の通り、ヨーロッパでは中世の長きにわたる封建制度の時代を経て、17世紀に産業革命がおこったことにより、多くの都市労働者を生み、それが民主主義国家の誕生へとつながっていきました。つまり、テクノロジーの発展が民主主義化を助けたのです。

しかし、今この時代においては、逆にテクノロジーの発展が、独裁化を進める度合いのほうが強いと考えています。

我々人類(ホモ・サピエンス)の歴史を、非常に客観的に描いたベストセラーである「サピエンス全史」の著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏が、その次著「ホモ・デウス」(”Homo Deus”)で、テクノロジーの発展によって我々人類がどう変化していくかを描いています。

その中で、我々人類のように「意識」は持たないが、我々より数段優れた「知性」を持ったもの(つまり、クラウド上の人工知能)が、やがて我々自身よりも我々をよく知るようになった時、そもそも民主主義や自由経済が適切か、という議論を展開しています。

民主主義は、個々の個人が正しい判断で投票を行うということを大前提としています。また、自由経済は、個々の個人(や法人)が正しい判断で売買を行うということを大前提としています。

しかし、実際に我々人類はさまざまな心理バイアスに左右されて、必ずしも正しい判断(つまり、自分にとって最も有利な判断)をできるとは限りません。

であれば、いっそのこと、投票も(株やその他諸々のものの)売買も、すべて人工知能に任せてしまったほうが合理的では、という議論です。

しかし、それはつまり、民主主義の放棄、そして自由経済の放棄につながっていきます。

長々と書きましたが、何が気になったかというと、今後のテクノロジーの発展により、そう遠くない将来に、そもそも民主主義も自由経済も「不要なもの」になっていく可能性があるということです。

そうなってしまったら、株式投資で不労所得を得る、なんてことも意味がなくなってしまいますね。

(雑談の余談)

でも、そもそも、日本のサラリーマンって、民主主義国家に暮らしているものの、「会社」という独裁システムの中で自由を奪われて生きているようなものですね。

その独裁から逃れて自由を得るための早道が、投資による不労所得の獲得に他なりません。