暴落に際して狼狽しないための準備

長期投資するのなら、株価が暴落しても持ち株を保有し続け、あわよくば買い増しすべし、ということは理屈ではわかっていることです。

しかし、リーマンショック級とはではいかなくとも、昨年度末のように相場が大きく下げると、「このまま際限なく下がり続けて、二度と株価は元に戻らないかも」なんていう不安に駆られるものです。

また、相場全体の暴落だけでなく、個別銘柄が様々な理由によって売り叩かれることもあります。最近の例だと、JNJがタルク訴訟の件やオピオイド訴訟の件で売り叩かれました。

自分の持ち株の暴落に際して、狼狽せず自信を持って保有し続け、そして現金があれば勇気を持って「落ちるナイフを掴みにいく」ために必要なことは何でしょうか?

それは、「その企業の事業内容についてよく知っておくこと」だと思います。

株価の暴落にもかかわらず、その事業のニーズが今後も存在し続け、そして、その事業を守る「ワイドモート」がしっかりしたままであることを、自分自身が十分腹落ちするまで理解していれば、保有し続けたり、買い向かったりする勇気を持てるはずです。

例えば、北米の鉄道会社ユニオンパシフィック(UNP)は、その物流ニーズが景気の波に沿って上下するので、それに伴って株価も上がったり下がったりします。しかし、長期的に北米大陸での物流ニーズは存在し続けるでしょうし、鉄道と同じコストでこれらのニーズにこたえる手段は現在のところ存在しません。

また、米中貿易戦争の長期化によって中国経済が大きなダメージを受けつつありますが、それでも国民の生活に欠かせない水、ガス、高速道路といったインフラに対するニーズは大きく下がらないでしょう。したがって、これらのインフラを独占する北控水務集団(0371.HK)、中国ガス(0384.HK)、江蘇高速道路(0177.HK)などの事業の永続性も揺らぐことはないと考えてよいでしょう。

逆に、その事業についてよく調べもせず、「他の誰かが推奨していたから」なんて理由で買った銘柄だと、そんな勇気を持ち続けるのは難しいでしょう。(その「誰か」に対する信用が揺るがないものなら話は別ですが・・・。しかし、あのバフェットが持っていたクラフトハインツ(KHC)ですら復活は難しそうです。)

暴落している理由が、ニーズがなくなるとか、モート(堀)が埋められそうな強力なライバルが現れたなんて場合には、売りを検討する必要があります。

最近の例だと、CHロビンゾン(CHRW)が築いていたネットワーク効果による強力な堀が、ウーバーやアマゾンの物流事業への参入によって埋められそうになっているようなケースです。(CHRWが本当にウーバーやアマゾンに取って代わられるかどうかは、まだわからないですけれど。)

ちょっと話がずれますが、ネットワーク効果によるワイドモートは、「規模の経済性」と組み合わさることによって、より強固なものになると考えています。

例えば、先日記事を書いたVisa(V)などがこれに当てはまります。

規模の経済性、つまり、すでに事業規模が大きくなりそれによる低コストが実現されていて、新規参入者が同じ価格で参入しても容易に利益が出ないレベルに達していれば、ITの巨人ですら参入から遠ざけことができるでしょう。

アマゾンですらVisaに対抗して世界的規模の決済インフラを新たに作り上げることは難しいと思います。むしろ、そこで勝負するのではなく、そのインフラを使って他のところで勝負した方が割にあうはずです。

話を元に戻しますが、いつ来るかわからない暴落に際して、落ち着いて銘柄を保有し続け、そして、落ちるナイフを掴みにいくために、保有銘柄や買いたい候補銘柄について、その事業内容、特に「どんなワイドモートで守られている事業か」をしっかり理解しておくことが重要です。

また、世の中の変化はますます早くなっていく一方ですから、思わぬところからライバルが急襲してくることもあります。いまあるワイドモートにあぐらをかかず、ニュースもしっかり見ておく必要がありますね。

投資と人生は自己責任で。