ワイドモート再点検

CHロビンソン(CHRW)の「ネットワーク効果」によるワイドモート(経済的な堀)が、UberやAmazonといったIT巨人の同業参入によって、(少なくとも私の心の中では)ボロボロと崩れていきました。

この機会に、他の銘柄のワードモートについて再点検してみたいと思います。盲点はないかな?

まず、中国、ベトナム株から。

江蘇高速道路(0177.HK) ― 上海・南京間の高速道路をはじめとして、 江蘇省の高速道路や有料橋梁を運営。独占が崩れるリスクは少ないでしょう。OK。

北控水務集団(0371.HK) ― 売上的には下水処理が大きいですが、浄水の売上の伸びが大きいです。人間にとって取って代わるもののない「水」を独占。これもOK。

中国ガス(0384.HK)― ガスパイプラインおよび各戸へのガス接続管によって、伸び続けるガス需要を独占。これもOK。

0177.HK、0371.HK、0384.HKとも、公共性のある事業なので、政府の意向に左右されることがリスクです。

NagaCorp(3918.HK)― プノンペン地区のカジノ運営独占権を保有。しかし、売上の大半は特定ジャンケット経由のVIP顧客によるものです。マカオや東南アジア地区の他のカジノとの競合リスクはあるでしょう。現在売上、利益とも急成長中で、Naga3の建設も計画されています。「絶対安泰」とは言えず、注意してみていく必要がある銘柄だと思います。

ノイバイ貨物(NCT)― ベトナムのハノイ空港の航空貨物事業で寡占状態。ライバルのALS社とも事業提携しています。競争激化のリスクは少ないと思います。むしろ、大手顧客であるサムソンの業績に大きく左右されそう。

つづいて、米国株。

ディズニー(DIS) ― ネット配信事業も始めていますが、最大の強みはコンテンツ。ミッキーマウスを代表とするディズニーキャラクターや、スターウォーズシリーズの人気は、当面陰ることはないでしょう。OK。

マコーミック(MKC)、International Flavors & Fragrances(IFF) ― どちらもニッチな分野で独占状態を維持しています。MKCはコショウを代表とする調味料。IFFは香料、香味料。食品業界は小売りのプライベイトブランド(PB)の脅威にさらされていく傾向にありますが、コショウのような「価格はたいしたことはないが、料理の味に大きく影響を与えるもの」は、PBにとってかわられる度合いは少ないと思います。IFFは業務用が主ですが、他社に切り替えられにくい理由は同じく、「最終製品に占めるコストはたいしたことはないが、最終製品の品質に大きくかかわる」ことです。どちらもOK。

ファステナル(FAST) ― 「顧客が製品を必要とするときに、すぐに手に入れられること」が最大の強みです。全米に展開される「朝7時から開いている」店舗網、顧客のサイト内に設置される工具やねじの自動販売機。他社が割って入るスキは少なさそうです。Amazonにも真似は難しいでしょう。OK。

ユニオンパシフィック(UNP) ― 北米の鉄道会社。9割近くが物流用途。新規参入の脅威も、代替手段の脅威も、現在のところなさそうです。OK。

ウェイストマネジメント(WM) ― NIMBY。ごみ処理施設を新に建設することが難しいのは、想像に難くないと思います。OK。

フィリップモリス(PM) ― たばこ業界への新たな参入は、事実上無理でしょう。たばこ需要の低迷がリスクですが、「堀」という面では不安は少ないと思います。電子タバコiQOSについては、ブリティッシュアメリカンや日本たばこの製品とのあいだで、嗜好が分かれるようです。この辺は、今後も注意してみていく必要があると思います。

ジョンソンエンドジョンソン(JNJ) ― 消費者向け製品セクターでは強固なブランド力があると思いますが、医薬品や医療機器分野の競争力は、素人には判断しずらい部分があると思います。同社の事業についてはもっと勉強が必要と思っています。

まとめ

現在のところ問題なし ― 0177.HK、0371.HK、0384.HK、DIS、MKC、IFF、FAST、UNP、WM

ちょっと注意が必要 ― 3918.HK、NCT、PM

もっとお勉強が必要 ― JNJ

もちろん、株主として報われる銘柄であるために、強力な堀があることはあくまで必要であって十分ではありません。

そもそも確実な需要があることと、株主を裏切らない経営をやってくれることが必要です。後者については、米国株は問題ないと思いますが、中国株やベトナム株は注意が必要でしょう。

また、総じて「将来Amazonが同じ事業に参入する可能性があるか?」という視点も役に立つと思います。上にあげた銘柄は、今のところどれもAmazonの参入の脅威は少ないと考えています。

今後いつ暴落が来るかはわかりませんが、その時にじっと我慢して保有し続けられるかどうかは、その企業の事業内容をどのくらいしっかり理解しているかにかかってくると思います。

10連休も残り少ないですが、たんたんと「自分の宿題」をこなしていきたいと思います。