[書籍紹介] バフェット流投資に学ぶこと、学んではいけないこと(ヴァホン・ジョンジグヨン)

原題は”Even Buffett Isn’t Perfect – What You Can-and Can’t-Learn from the World’s Greatest Investor” (Vahan Janjigian)です。

いわゆるバフェット本と呼ばれる書籍はたくさんありますが、それらの多くがバフェットを称賛し、彼の手法をただただまねることを推奨しているのに対して、本書は、我々一般の投資家にとっては必ずしもバフェットと同じように投資することはできないし、すべきではないという主張をしています。

例によって、このブログにとって(つまり、長期投資を目指す一般の個人投資家にとって)参考にすべき点を挙げていきます。

集中投資か分散投資か

よく知られているようにバフェット(およびバークシャー・ハサウェー)は、コカ・コーラなどの限られた銘柄に集中投資をしてその資産を増やしていきました。しかし、近年では「集中投資するには大きくなりすぎた」ために、分散投資に移行しつつあります。

集中投資がよいか、分散投資がよいかについて、本文でも触れられているようにバフェットは一見矛盾するような発言をしています。

  • 「私どもが採用しているこの戦略は、標準的な分散投資の考えに従ったものではありません」(集中投資を推奨)
  • 「おそらく投資をなさる方々の99%以上は、徹底した分散投資を心がけるべきです」(分散投資を推奨)

では、バフェットはいったいどちらを推奨しているのか。

その答えは、「分散投資は自分には向いていないが、自分以外の大半の人には最適の戦略である」というものです。

あるいは、「企業を評価する方法を本当に知っている人にとっては、分散投資は愚策」とも。

裏を返せば、「企業を評価する方法も知らない素人が、少数の銘柄に集中投資すべきではない」ということになるのでしょう。

分散して銘柄が増えれば増えるほど各銘柄をチェックするための時間(コスト)がかかりますから、結局素人はインデックス投資(ETF投資)をするのが一番です。でも、インデックス投資をするということは、「良い銘柄」だけでなく、(買いたくない)「悪い銘柄」も一緒に買ってしまうことになるので、「自分はやらない」ということです。

「アンダーバリュー株」を買う

本書ではざっくりと、株価が高い(PERやPBRが高い)銘柄を「グロース株」、低い銘柄を「バリュー株」と呼んでいます。

バフェットがグロース投資家か、バリュー投資家かという議論はあまり意味がなく、「アンダーバリュー株」、つまり、「真の価値より安い価格で売られている株」を買うのがバフェットのやり方です。

しかし、「真の価値」を正しく知るためには割引キャッシュフロー法(DCF法)を使う必要があります。これは素人が簡単に計算できるものではありません。プロとて計算する人によって前提条件が異なるためその結果は違ってくるし、そもそもそれが合っているかどうかは数年経過してみないとわかりません。

プロですらちゃんと計算できないのですから、われわれ素人は、よい企業かどうかだけをしっかり調べたうえで、株価については感覚で「安い」と思えるときに買ったので良いのだと思います。

また、著者の意見として、素晴らしい企業(業績の良い企業)は、必ずしも素晴らしい銘柄とはいえないと主張しています。なぜならば、素晴らしい企業は人気があり株価が高くなる傾向があるということと、(強固な参入障壁がなければ)そのような業界にはすぐに競合が現れて業績が低下するからです。(後者については家具の小売業「ピア1インポート」社の例が挙げられています。)

「成長する見込みはないと誰もが考えているときに株を買う」のがバフェットの成功の秘訣です。

バリュー株とアンダーバリュー株は異なるものの、バリュー株、つまり株価が安い株の中にアンダーバリュー株がある割合が多いため、バリュー株を調べたほうが手間が少なくて済みます。

小型株のほうが有利

ぐんぐん成長してきた企業でも、その規模が大きくなるとどうしても成長の速度が鈍くなってきます。

同じ程度「割安」な銘柄を買うのであれば、小型株のほうが有利であることが示されています。

バフェットのように莫大な資産を運用する投資家には小さすぎるような小型株の中に、われわれ個人投資家にとってお買い得な「お宝銘柄」が隠れているかもしれませんね。

株と結婚してはいけない

バフェットは、企業をまるごと、あるいは、部分的にでも買うにあたって、その企業を「永久に」保有するつもりで買うことはよく知られています。実際には売却した事例もありますが、原則としてその企業と「結婚する」つもりで長期間付き合うのがバフェットの方針です。

そのことが確かめられるのが、保有する企業の業績が低迷した時です。例として、ソロモン・ブラザーズやゼネラル・リーが危機に陥った局面が挙げられています。

ここで著者の主張は、「企業の業績が低迷したり、危機に陥っても株を持ち続けるのは、バフェットだからできることであって、一般の投資家はマネするべきではない」というものです。

その理由は、株式の全部あるいは大部分を持つバフェットは、(基本的には経営に介入しないのがバフェットの方針であるにもかかわらず)企業の業績低迷や危機にあたって、経営に影響を及ぼすことができるが、一般の投資家にはそんなことは到底できないからです。

(バフェットが経営に介入した例として、ソロモン・ブラザースの救済のためのそのCEOになったことや、ゼネラル・リーの保険料を値上げさせたことが挙げられています。)

また、バフェットは割安で買った株価が高くなり、「オーバーバリュー株」になってもそれを保有し続けるが、一般の投資家は株価が高くなったら売るべきと著者は主張しています。

(この著者の主張には、このブログとしてはあまり同意できません。その理由は、キャピタルゲイン税を避けて長期的に株式を保有することを優先したいからです。)

感想

他にも、ストックオプションの話とか、税制に対するバフェットの主張とか、業績予想に対するバフェットの主張などが書かれていますが、われわれの投資活動において直接学ぶべきところは、上に書いたとおりだと思います。

人気の急成長株に心を奪われることなく、その本質的な価値にもかかわらず人気がなく株価が低く放置されている企業を見つける。特に、機関投資家があまり狙わない小型株を中心に。

そして、そういう株を見つけたり、観察し続ける仕事をできるだけ効率よくこなし、自分の能力の範囲でできるだけたくさんの銘柄に分散する、というのが良いのではないかと思います。

(今回はちょっと長くなってしまいました。すみません。)

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