長期投資のターゲットにすべき銘柄

米国株の決算発表が続いています。

(このブログでも、FASTMKCUNPCHRWなどの決算を取り上げていますので、よければご覧ください。)

上場している米国株だけでも何百銘柄もある上、中国株やその他外国株までターゲットに入れると、すべてを人手でフォローするのは無理です。

スクリーニングなどの機能を使って機械的に絞り込んだうえで、あとは定性的な判断と定量的な判断をしていく、というのが、個人でできる銘柄選択のやり方の一つかなと思っています。

このブログでターゲットとしている長期投資銘柄の選び方について整理してみます。

定性的な判断

1.強力な参入障壁

なんといっても、強力な参入障壁(あるいはワイドモート)を持っていることが、長期にわたって利益を上げるための最低条件でしょう。この「強力な」という言葉には「永く続く」という意味が含まれています。

ワイドモート(堀)についての良い教科書として知られているのが「千年投資の公理」という本です。

ワイドモートの例として、無形資産(ブランド、技術、特許、許認可)、顧客の切替コスト、コスト優位性などが挙げられていますが、なんといっても一番強力なワイドモートは「ネットワーク効果」だと思います。

ネットワーク効果については、CHロビンソンの記事( CHRW )に簡単に触れているのでよかったら見てみてください。

2.確実な需要

いくら強力な堀、あるいは壁を持っていたところで、そもそも需要がなければ事業として成り立ちません。

B2BとB2Cで比べるとB2Bの方が需要が固いケースが多いような気がします。

定量的な判断

決算表から拾える数字のうち、特に以下のものを重視しています。

  1. ROE ― できれば20以上、最低でも15くらいは欲しいところです。日本株のほとんどがこのフィルターで落第します。ROEが高くても、ROAが低い場合にはレバレッジでROEを底上げしている場合があるので要注意です。
  2. 安定したフリーCF ― 5年か10年くらいのスパンで、安定してプラスのフリーCF(営業CFと投資CFの合計)が出ていること。ただし、買収などで大きな投資をした場合には投資CFが大きくマイナスになる場合がありますが、数年分の利益で回収できそうなら問題ないでしょう。
  3. 内部留保の再投資が利益の増加につながっているか ― 毎年の利益のうち、配当または自社株買いとして株主に還元されなかった残りが内部留保です。株主としては、還元されずに将来の利益のために再投資された内部留保が、ちゃんと利益の増加につながっているか気になるところです。このブログでは可能なら直近10年分について、「利益の増加額÷内部留保の累計」という数値を見ています。ROEと同じく20くらいあれば十分ですね。

このブログで注目している銘柄

上記のような判断基準で選んだ銘柄をいくつか挙げてみます。

  • ファステナル(FAST) ― ねじ、工具、その他工事用品といったコモディティを扱っていますが、その販路に強みがあります。
  • マコーミック(MKC)
  • ディズニー(DIS)
  • CHロビンソン(CHRW)
  • International Flavor & Fragrance(IFF) ― 香料と香味料の大手です。「顧客企業にとってはたいしたコストではないが、その顧客企業の製品の品質のために欠かせないもの」を売っているというタイプの強みを持つ企業です。(過去記事
  • ユニオン・パシフィック(UNP) ― 米国の内陸物流を担う鉄道会社です。鉄道インフラそのものがワイドモートです。
  • ウェイスト・マネジメント(WM)― ごみ、廃棄物処理を行う企業です。Nimby(Not-in-my-back-yard)、つまり、世の中には欠かせないけれど、自分の家の近くには来てほしくないというタイプの企業です。新たな参入者が許認可をとろうとしても難しい点が、同社の参入障壁となっています。

他にもいくつかありますが、追ってご紹介していきたいと思います。

ちょっと距離を置きたい銘柄

過去には注目していたものの、現在ではちょっと手を出さない方がよいと思っている銘柄です。

  • 食品メーカ ― かつてはブランド力で消費者を引き付けてきたものの、最近は大手小売りやアマゾンのプライベイト・ブランド(PB)に押され気味です。GIS、HRL、KHC、K、ベトナム株でビナミルク(VNM)、インドネシア株でインドフード(INDF)など。
  • 外食 ― マクドナルド(MCD)、YUM!グループ(YUM)など。消費者の心は移ろいやすく、切替コストがほぼゼロの外食が「永続的に」利益を上げるのは難しいでしょう。
  • 市場や需要は急成長しているものの参入障壁が低いもの ― 中国の高齢化に伴う葬儀・埋設需要に応える福寿園国際(1448.HK)とか(過去記事)。売上、利益とも急成長ていますが、いずれ頭打ちになるリスクが高いと考えています。
  • 製薬会社 ― 製薬会社のワイドモートは主に「特許」ですが、いずれ効力はなくなるものですし、新な新薬を開発するコストは年々上昇していると聞きます。5年、10年に渡って安定的に利益を上げることは難しいのではないでしょうか。
  • 保険 ― 「先にキャッシュが入って、後からキャッシュが出ていく」という事業の性質上、その手元のキャッシュ(フロート)を使って投資できるという特徴があります。バフェットも保険事業に大きく投資しており、毎年発行される「株主への手紙」で保険事業への投資のメリットについて主張されています。しかし、私は保険サービスそのものは顧客から見ればコモディティであり、常に激しい競争にさらされているので、安心して長期投資できるターゲットにはなりにくいと考えています。

最後に

ここに書いたような基準で銘柄を選び、10数個銘柄保有するのが、個人的にはちょうどいいかなと思っています。

人によっては「せめて数銘柄に集中すべし」という方もいます(かつて邱永漢さんもよくそうおっしゃっていました)。

しかし、永続的な企業と思われた企業が、突然スキャンダルや事故に見舞われて、その永続性を失ってしまう事例もあります(東京電力とか)。そういうリスクをできるだけ避けるため、可能な範囲で銘柄数は増やしたいと考えています。(企業がスキャンダルに見舞われた事例についても過去記事があるので、よければご覧ください。)

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