昭和の雰囲気の京都の街並み ― 映画「Keiko」

1970年台後半頃の京都を舞台とした映画です。

この映画のおおきな特徴の一つは、出演者のセリフが、いかにも「映画調・ドラマ調」ではなくて、本当にふつうの生活でしゃべっているような口調だという点です。

舞台が京都なので、関西弁のセリフも出てきます。(関西の方や関西に住んだことのある方ならわかると思いますが、)日常の口調の関西弁でしゃべっています。

主演の若芝順子という女優は、初主演のこの作限りで映画界から姿を消したとのことですが、素人くささが逆にいい味を出しています。

ストーリー自体は、心の充足を求める若いOLが、そうとは知らず妻帯者と関係を持ち、そして恋に破れ、男性を信用できなくなった彼女は年上女性との同性愛に落ちる。気の合った二人は幸せで充実した生活を始めるが、しかし最後には・・・というようなお話です。

四十年前の京都の風景が昭和の雰囲気をぷんぷんさせています。

古い市バス、木屋町あたりのネオン、喫茶店で食べる「ピラフ」、風呂なしの狭いアパート、アイシャドウを塗ったお化粧、ジュークボックス、手打ちのパチンコ台、京福電鉄(当時)の古い車両、そしておそらく修学院あたりでしょうか、最後に二人が住んだ山手の古民家。

私がこの映画を始めてみたのは1980年代後半頃でした。レンタルビデオ屋で何となく手に取って見てみたのですが、冒頭に書いた普通のしゃべり口調の会話がとても印象に残っていました。

この映画の監督がカナダ人だということも、こんな変わった映画を作れた理由なのかもしれません。

三十数年ぶりに見てみましたが、そのときとはまた違った楽しみ方をすることができました。