人口ピラミッドがひっくり返るとき [書籍紹介]

先日別の記事でちょっとふれた「人口ピラミッドがひっくり返るとき」を通読しました。

この本(邦訳)は1999年に出版されています。私が買ったのは、たぶん2000年頃だと思います。

読み進めてみると、読んだ跡があるのは最初の数十ページで、あとはまっさらな状態でした・・・。つまり、我が家の本棚で十数年「積ん読」になっていたわけです。

当時まだ私は投資活動を始めていませんでしたし、そのため本書の内容にあまり興味がもてなかったのでしょう。

(当時はITバブルの崩壊やライブドア事件があり、「株を買うなんて、危ないこと」と思っていたりしました。)

しかし、投資歴十数年の今になって読むと、いろいろと興味を持って読むことができました。

特に投資活動の面から参考になる点をあげておきます。

・中年(四十代から五十代)という世代は、株式などのリスクが高い資産への投資をもっとも気楽に行える時期である。長期的な視点を持つことができるので相場の浮き沈みも乗り越えることができるし、仮に相場が期待を裏切っても労働収入でそれを補うことができる。

・しかし、退職して老年になるとそうはいかない。労働収入がなく配当や資産の切り崩しで生活する身にとって、株価の下落による資産の低下は心理的にも堪える。

・したがって、六十代になればポートフォリオに債権を入れておくべきである。

・今後各国で少子高齢化が進むと、将来に備えた資産形成のために株を買う層よりも、生活のために株を売り崩す層が多くなるため、株価は低迷する。先進国で高齢化が進んでも当初は新興国の豊富な労働力がそれを支えるが、やがて新興国でも高齢化が進んでくる。

・高齢化が進む世界ではビール市場は縮小する。

・労働市場について: 高齢者は誰かに雇用されることよりも、起業したり、技能と専門知識に磨きをかけ思い通りの条件で働ける状態を維持すべき。

・人口構成が「若い」からといって、その国への投資が報われるわけではない。経済発展にはその国の「文化がすべての鍵を」握っている。(ここでその国への投資が報われない国とは、南アジア、サハラ以南のアフリカ、中東諸国のことを指している。)

・「模倣は最も誠意のあるお世辞である」(参考になった言葉)

テーマがら各国の年金事情についてもいろいろ触れられていますが、個人でどうにかできる問題ではないので割愛します。(そういえば、当時は確定拠出年金(日本版401K)もまだ導入されていませんでしたね。)

何十年後になるのかわかりませんが、世界レベルで「人的資産を生かして、つまり働いて生産を上げる人口」よりも「働かずに金融資産から収入を得る人口」が圧倒的に多くなったとき、株主への還元が十分に行われるのかどうか、ちょっと不安になったりします。

そもそも知識が価値の源泉となるようになれば、株式公開して大規模な資本を得ずとも、プライベイトカンパニーで十分利益を上げられるようになるかも。